「一流監督」小久保裕紀はやっぱり「一流の選手」だった…ベテラン打撃投手が見た「すごい打者」の共通点


【写真】福岡ソフトバンクホークス内野手の小久保裕紀、現役最後の打席

 ※本稿は、濱涯泰司『職業・打撃投手』(ワニブックス【PLUS】新書)の一部を再編集したものです。

■「いい打者」と「そうでない打者」の違い

 私が投げていて感覚的に思うことなのですが、一流の打者と評価されるようなバッターのほうが、1球1球考えながら、集中力高く大事に打っている感じがあります。

 一軍に上がったばかりの駆け出しの若いバッターに投げることもありますが、そういうバッターのほうが何か淡々と打っている、言葉は悪いですが「ただ打っているだけ」と感じることがあります。

 もしかしたら若いバッターたちのほうが量は多く練習しているのかもしれませんが、質という意味では一流選手たちには遠く及ばないように思います。

 だからこそ一流選手になれたのだということかもしれませんし、数をこなすことによって技術力が身につき、その次の段階に進めるのかもしれません。バッターではないので、そのあたりのところまではわからないのですが、練習の質に違いがあることは投げていても確実に感じます。

■未来のメジャーリーガーの練習風景

 長い長い25年のホークスでの打撃投手人生では、いろんなバッターを担当させてもらいました。

 打撃投手になって最初に専属になって投げたのが井口資仁と城島健司でした。まだ打撃投手として駆け出しだった頃なので強く印象に残っています。

 井口のバッティング練習は、真ん中低めを右中間にホームランです。

 試合ではコースに逆らわず、レフトにもセンターにもライトにも放り込んでいましたが、練習ではひたすら真ん中低めをゴルフのパンチショットのような打ち方を繰り返し、逆方向、右中間方向にとんでもなく飛ばしていました。

 特にそこに投げてほしいと言われたことはないのですが、打撃投手とバッターは打ち方や、打ったあとの反応で会話をするようなところがあります。

 バッティング練習の時間、打撃投手が投げたストライクはもちろん全部打ってくれるのですが、井口にとってはこの真ん中低めを右中間へ放り込むことで、感覚をアジャストしていたんだと思います。あるいは、その感覚だけ合わせておけば、他のコースは試合でも対応できるということだったのかもしれません。

 「ああ、井口はこれを繰り返しやりたいんだな」と私は感じたので、ずっとそこに投げ続けていました。



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