「引き続き林官房長官には政権の要として、この古里のためにご活躍いただきたい」
衆院選の投開票が行われた27日夜。自民党の吉田真次氏(40)は山口県下関市のシーモールパレスに駆けつけ、山口3区で再選を決めた林芳正氏(63)の支援者とともに万歳三唱し、こう呼びかけた。その後、自身も比例中国ブロックで当選を果たした。
衆院小選挙区の区割りの改定に伴い、今回から県内の選挙区数は4から3に減り、同市は3区になった。旧山口4区時代、同市は安倍晋三元首相の地盤だったが安倍氏の死去後、2023年6月に林氏が3区の支部長に就任。一方、安倍氏の後継として同年4月の旧4区の補欠選挙で初当選した吉田氏は比例に転出した。
林家と安倍家を巡っては、同市と同県長門市で構成していた旧4区を中心に中選挙区の時代からの因縁がある。
林氏の父・義郎氏と安倍氏の父・晋太郎氏は1969年から同じ選挙区でしのぎを削ったライバル。94年の小選挙区制導入を機に安倍氏が旧4区から出馬し、義郎氏が比例に回った。林氏は参院議員として実績を積んできたが、2021年の前回選で首相の座を目指して旧山口3区にくら替えした。
林氏と安倍氏が直接選挙で戦ったことはないが、これまで下関市を中心に地方議員や企業・団体が「林派」と「安倍派」に色分けされてきた。ただ、安倍氏の死去を受け、一部でこの関係性に変化が起きつつある。
今年9月の総裁選では、山口で「9人目」の首相と期待される林氏が出馬すると、安倍派とされた人も含む自民党の県議が応援組織を作って支援。安倍氏の元秘書の前田晋太郎・下関市長も決起大会で、過去の対立関係を念頭に「もう迷うことはないだろう。皆さんとともに山口をまずは一つにし、総理に林先生を押し上げていく」とエールを送る一幕もあった。
今回は林氏が全体の約7割に当たる11万5687票を得て、維新と共産の新人2人に圧勝した。28日に報道陣の取材に応じた自民党県連の友田有幹事長は「林先生が3区で一定の理解を得て、今回の高い得票につながった」と分析した。