ディワリ目前、インド北部とパキスタン東部を覆う深刻な大気汚染

祝祭ディワリを目前に控えたインド北部とパキスタン東部が、深刻な大気汚染に見舞われています。花火が打ち上げられるディワリは、毎年大気汚染を悪化させる要因となっています。この記事では、深刻化する大気汚染の現状と、その対策について詳しく解説します。

世界最悪レベルの大気汚染

世界の大気質を監視する「IQAir」によると、インドの首都ニューデリーの大気質指数(AQI)は数日間、200を超える「非常に不健康」レベルを記録し、28日午前には約250に達しました。インド国境から約25キロ離れたパキスタンの都市ラホールでは、同日AQIが500を超える「危険」レベルに達し、世界保健機関(WHO)の基準の約65倍、IQAirによれば世界で最も大気が汚染された都市となりました。

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冬が近づくにつれ、農業廃棄物の焼却、石炭火力発電、交通渋滞、無風状態などにより、大気汚染はさらに悪化すると予想されています。

ディワリの花火と大気汚染

31日から始まる5日間のディワリ祝祭では、人々が家族で集まり、爆竹を鳴らします。地域によっては爆竹の使用が禁止されているにも関わらず、無視して使用されるケースも多く、大気汚染をさらに悪化させる要因となっています。

毎年スモッグの季節になると、オレンジ色のスモッグに包まれた街のディストピア的な光景がニュースで取り上げられ、呼吸器疾患のリスクや平均余命への影響についての専門家の警告が報じられます。インドの大気汚染の深刻さは専門家からも指摘されており、数億人の寿命を縮める可能性があると警鐘が鳴らされています。

対策の現状と課題

デリーではディワリに先立ち爆竹の使用と販売を禁止していますが、実効性のある対策とは言えません。インド政府は2019年に全国的な大気浄化プログラムを開始し、2026年までに粒子状物質の濃度を40%削減する目標を掲げています。このプログラムには、石炭火力発電の停止、大気監視システムの設置、バイオマス焼却の禁止などが含まれています。

ニューデリーでは、道路への散水や人工降雨といった対策も実施されていますが、専門家からは根本的な解決策にならないと批判されています。政府のデータによると一部の都市では大気質の改善が見られるものの、進捗は遅いのが現状です。IQAirによると、ニューデリーのPM2.5の平均濃度は2018年から2022年の間、ほぼ横ばいです。

専門家の意見

環境問題の専門家、田中一郎氏(仮名)は、「インドの大気汚染問題は、経済発展と環境保全のバランスをどう取るかという、世界的な課題を象徴している」と指摘します。「短期的な対策だけでなく、長期的な視点に立った持続可能な社会システムの構築が不可欠だ」と述べています。

未来への展望

大気汚染問題解決には、政府、企業、市民一人ひとりの意識改革と行動が求められています。よりクリーンなエネルギーへの転換、環境に配慮したライフスタイルの普及など、多角的なアプローチが不可欠です。

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ディワリという伝統的な祝祭と、健康的な生活環境の両立を実現するために、より効果的な対策が求められています。