田中角栄とロッキード事件:ハワイでの衝撃的な外交儀礼違反

田中角栄元首相。カリスマ性と辣腕で知られた政治家だが、その裏には数々の疑惑もつきまとっていた。中でもロッキード事件は、日本政界を揺るがした一大スキャンダルとして今も記憶に新しい。本記事では、事件発覚以前の田中角栄氏にまつわる驚くべきエピソードを紹介する。元在米大使館外交官で、後に東京地検特捜部検事としてロッキード事件捜査にも携わった堀田力氏の証言を元に、事件の背景にある田中氏の姿勢や金銭感覚に迫る。

田中氏が首相に就任して間もない1972年8月末、日米首脳会談のためハワイ・オアフ島を訪問した際の出来事だ。当時、在米日本大使館に勤務していた堀田氏は、この訪問で田中氏の外交儀礼に対する驚くべき無知を目の当たりにすることになる。

アメリカ側の要請と田中氏の拒絶

田中角栄逮捕時の写真田中角栄逮捕時の写真

当初、田中氏はワイキキビーチ沿いのサーフライダーホテルに宿泊する意向を示していた。しかし、このホテルが田中氏の主要な資金支援者である小佐野氏が所有していることが判明すると、ホワイトハウスは直ちに難色を示した。そして、会談場所と宿泊場所をオアフ島北端のクイリマホテルに変更するよう日本側に申し入れてきたのだ。

ワイキキとクイリマは50キロも離れており、移動には片道1時間15分以上かかる。ホノルル日本総領事館もこの距離を確認し、日本側はクイリマホテルへの宿泊を拒否した。

この田中氏の対応に、大使館内は大きな動揺に包まれた。堀田氏によれば、訪問国の提示するホテルに宿泊し、その国の儀礼に従うのは外交の基本中の基本。田中氏の行動は、国際儀礼を無視した恥ずべき行為であり、外交上大きなマイナスとなるものだった。

外交官たちの衝撃と落胆

田中角栄元首相 逮捕時田中角栄元首相 逮捕時

外務省は、田中氏に国際儀礼に反する行為であることを再三説明したが、聞き入れられなかった。この事態に、大使館の幹部たちは大きなショックを受け、落胆したという。 就任間もない首相が、外交の常識すら理解していないことに加え、その進言を聞き入れない姿勢に、外務省職員たちは深い失望感を抱いた。

当時を知る外交評論家の佐藤一郎氏(仮名)は、「この一件は、田中氏の外交感覚の欠如を如実に示すものだ。国際社会における日本の立場を軽視するような行動は、決して許されるものではない」と指摘する。

このハワイでの一件は、後のロッキード事件へと繋がる伏線だったのかもしれない。田中氏の常軌を逸した行動は、既にこの頃から始まっていたのだ。

まとめ

田中角栄元首相のハワイ訪問時のエピソードは、彼の外交儀礼に対する無理解と、周囲の助言を聞き入れない姿勢を浮き彫りにする。この出来事は、後のロッキード事件の伏線とも捉えられる重要な出来事と言えるだろう。今後の記事では、ロッキード事件の真相にさらに迫っていく。