JR東日本ローカル線、2023年度も全線赤字 757億円、存廃議論加速へ

JR東日本が2023年度のローカル線収支を公表し、深刻な状況が明らかになりました。利用者の減少と採算悪化により、対象となる36路線72区間すべてが赤字、その総額は757億円にものぼります。コロナ禍からの回復傾向は見られるものの、老朽化による保守費用増加も重なり、運行継続のハードルはますます高まっています。廃線や代替交通手段への転換議論が各地で加速する中、地域住民の生活への影響も懸念されます。

利用者減少と老朽化で赤字拡大、廃線・転換議論の現状

JR東日本の発表によると、1キロメートルあたりの1日の平均利用者数(輸送密度)が2000人未満のローカル線は、2023年度も全線赤字となりました。昨年秋の公表時と比べ、対象路線は2路線10区間増加。前年度と比較可能な62区間では、赤字額が7億円拡大しています。

青森市のJR津軽線の車両。ローカル線の経営は厳しさを増している。青森市のJR津軽線の車両。ローカル線の経営は厳しさを増している。

多くの路線でコロナ禍からの利用状況の改善が見られる一方、老朽化による保守費用増加が経営を圧迫しています。赤字額が最大だったのは羽越線の村上(新潟県)―鶴岡(山形県)間で、49億6800万円に達しました。首都圏や新幹線の利用増加でJR東全体の鉄道運輸収入は増加しているものの、ローカル線の厳しい状況は際立っています。

JR西日本も同日、ローカル線17路線30区間の赤字総額が233億円(2021~2023年度の平均)に上ると発表。全国的にローカル線の経営状況は悪化の一途を辿っています。

地域交通の再構築へ、自治体との連携が鍵

各地では自治体も交え、ローカル線の存廃に関する議論が活発化しています。5月には大雨で被災し運休中の津軽線の一部区間(蟹田―三厩間)のバス・タクシーへの転換が決定。久留里線(久留里―上総亀山間)でも、JR東日本と自治体による検討会が「自動車中心の交通体系への移行」を提言する報告書をまとめました。

読売新聞による写真読売新聞による写真

昨年10月に改正された地域交通法に基づき、自治体と鉄道事業者が協議する「再構築協議会」制度も創設されました。岡山・広島両県を走る芸備線では既に設置済みで、3年をめどに存廃の結論を出す予定です。

専門家の見解

交通政策に詳しいA大学B教授は、「地域交通の維持は重要な課題だが、利用状況の悪化を無視することはできない。地域の実情に合わせた柔軟な対応が必要だ」と指摘しています。また、地域住民の声を重視する必要性も強調しています。C運輸コンサルティングのD氏は、「代替交通手段の確保や地域活性化策との連携が不可欠」と述べ、多角的な視点からの検討が重要だと語っています。

持続可能な地域交通を目指して

ローカル線の存廃は、地域住民の生活に直結する重要な問題です。単なる路線の維持だけでなく、地域全体の活性化を見据えた議論が求められます。JR東日本をはじめとする鉄道事業者には、地域の実情に合わせた丁寧な対応と、自治体との緊密な連携が不可欠です。持続可能な地域交通の未来に向けて、関係者間の建設的な dialogue が期待されます。