コンビニ大手・ローソンが6月、北海道稚内市で3店を同時オープンさせた。市内では約2年前に「第1号店」を出してから、これで7店となった。人口減に伴うスーパー撤退など地域の買い物事情に配慮したハイペースの店舗展開は、全国の過疎地へ出店を進める戦略の先行モデルになっている。(宮下悠樹、阪本高志)
スーパーの跡地で
市中心部から郊外の稚内空港へ向かう国道沿いに立つ「声問店」の営業初日となった6月5日、午前8時の開店と同時に近所の主婦ら数人が店に入った。76歳の女性は「家の近くに色々な商品が売っているコンビニ店ができて、ありがたい」と喜んだ。
声問店がある場所は地場のスーパー跡地で、小売店の再開が期待されていた。3年前に名古屋市からUターンしてきた同店オーナーの是川裕也さん(39)は「地元の人が買い物に困っていたのでほっとしている。野菜や子どものおもちゃ、仏壇に供える花など求められる品をそろえていきたい」と意気込む。
市内ではこの日、国道沿いに「萩見五丁目店」と住宅街に「宝来五丁目店」も開店した。
想定以上の売り上げ
ローソンを訪れる客1人あたりの商品購入額は全国平均799円だが、2023年8月から11月にかけて開店した市内4店はいずれも1000円以上と「客単価」が高い。生鮮品や「からあげクン」などのホットスナック、デザートが人気で、想定の売り上げを5割上回る店もある。現金自動預け払い機(ATM)やイベントチケットなどを扱う情報端末「Loppi(ロッピー)」も好評だ。
通常の店舗より弁当や冷凍食品、生鮮食品が充実しており、スーパーの代わりに利用する客が多いという。
ローソンは通常、店の半径350メートルを商圏としているが、車移動が基本の市内では、約20キロ離れた地域からの来店も見込む。大雪などで物流が途絶える事態に備え、「栄五丁目店」では通常の3倍の在庫スペースを設けた。市内で18店を展開するセイコーマートには及ばないが、特定地域に店舗を集中させる「ドミナント戦略」で存在感を高めている。