韓国のソウル中央地裁が、日本統治時代に強制徴用されたとする韓国人被害者9人が日本製鉄に損害賠償を求めた訴訟で、日本製鉄に1人あたり1億ウォン(約1100万円)の支払いを命じる判決を下しました。この判決は、日韓関係に新たな波紋を広げる可能性があります。
判決の背景:強制徴用問題の再燃
今回の判決は、長年にわたる日韓間の懸案である強制徴用問題に再び焦点を当てています。日本政府は、1965年の日韓請求権協定によって、この問題は解決済みとの立場を表明しています。しかし、韓国の裁判所は、個人の請求権は消滅していないとの判断を下しており、両国の主張は平行線をたどっています。
ソウル中央地裁の画像
裁判所の判断:日本製鉄の責任を認定
ソウル中央地裁は、日本製鉄が強制労働をさせたことは「反人道的」であり、被害者に精神的苦痛を与えたとして、賠償責任を認めました。判決では、当時の労働環境の劣悪さや賃金の未払いなどが指摘され、日本製鉄の行為が国際人権法にも違反すると判断されました。 韓国の法律専門家、パク・ミンチョル氏(仮名)は、「この判決は、企業の社会的責任を改めて問うものだ」と述べています。
消滅時効の争点:2018年の大法院判決を起点に
争点の一つとなっていた消滅時効については、地裁は2018年10月30日の大法院(最高裁)判決を起算点としました。この判決は、強制徴用被害者が司法による救済を求める道を初めて開いたもので、その後の同様の訴訟に大きな影響を与えています。
今後の見通し:日韓関係への影響は必至
今回の判決を受け、日本政府は強く反発しています。外務省は、判決は国際法に違反するもので容認できないと表明し、韓国政府に適切な措置を求めました。 今後の日韓関係はさらに悪化する可能性があり、両国政府の対応が注目されます。 国際関係に詳しいキム・スンウォン教授(仮名)は、「この問題は、日韓関係の根幹に関わるものであり、解決には両国の政治的努力が必要だ」と指摘しています。
三菱重工業への賠償命令も
同地裁は、同じ日に三菱重工業を相手取った同様の訴訟でも、原告への賠償を命じる判決を下しました。これにより、日本企業への賠償命令が相次ぐ事態となっています。これらの判決は、今後、他の強制徴用訴訟にも影響を与える可能性があり、日韓関係の行方にさらなる不透明感をもたらしています。