自衛隊、看護師、そしてお笑いへ:女性芸人まつなみが見つけた「天職」の原点

ある出来事をきっかけに、「私が本当にやりたかったのはお笑いだったんだ!」と確信した一人の女性がいます。自衛隊、看護師、そしてモデルという異色のキャリアを経て、31歳で「お笑い芸人こそが天職」だと悟ったのが、今注目を集める女性芸人、まつなみさんです。現在は外資系企業に勤務しながら、そのユニークな芸風で観客を沸かせています。「和式トイレ」や「脚立」といった小道具を用いた型破りな漫談は、彼女の多岐にわたる人生経験から生まれています。一体、彼女はどのような道を歩み、お笑いの世界にたどり着いたのでしょうか。異色の経歴を持つ彼女の半生に迫ります。

異色の芸風とプロフェッショナルな姿勢

まつなみさんの芸は、その背景からは想像もつかないほど体を張ったものです。例えば、OLの制服姿で脚立に乗り漫談を繰り広げる「脚立の女」は彼女の代表的なネタの一つ。また、かつては黒いタンクトップに黒タイツ、ハイヒールという姿で、手作りの和式便器にまたがって漫談をするという、さらに過激なネタも披露していました。

現在の本業は会社員でありながら、このような「体を張ったネタ」に抵抗はないのかという問いに対し、彼女は「むしろ気持ち良いと感じる」と答えています。外資系企業勤務という経歴から「お高くとまっている」と思われがちですが、和式便器のような小道具を制作している時こそ「これが私のやりたいことだ!」と、生きがいを強く感じていたと言います。この意外なギャップこそが、彼女の芸の魅力の一つであり、プロフェッショナルな姿勢を物語っています。

舞台で「ガニ股」ポーズを披露する女性芸人まつなみさん舞台で「ガニ股」ポーズを披露する女性芸人まつなみさん

異色の経歴:自衛官と看護師の学生時代

お笑い芸人になる以前、まつなみさんは自衛官や看護師、海外勤務といった多岐にわたる職歴を経験しています。実は、彼女は国立三重大学医学部の看護学科を卒業しており、高い学歴を持つインテリ芸人としての顔も持ち合わせています。教育熱心な母親の勧めもあり、看護師を目指していましたが、大学4年間は講義よりも「自衛隊の訓練漬け」の日々を送っていたと明かします。

自衛隊には「予備自衛官補」という制度があり、普段は学生や社会人として働きながら、有事の際に招集される“非常勤の自衛官”として活動する道があります。大学入学後すぐに予備自衛官補の試験を受け、合格したまつなみさん。本来3年間で50日間の教育訓練が義務付けられているところ、彼女は自主的に年間約50日も訓練に励んでいました。その熱心さゆえに、大学の単位を落としかけるほどだったと言います。子どもの頃から自衛隊に強い興味を抱き、「戦地を自分の目で見て、貢献したい」という強い思いを抱いていました。本当は防衛医科大学校への入学を志望していましたが、残念ながら叶わなかった過去があります。

厳しい訓練が培った経験と達成感

自衛官としての訓練は、まつなみさんの人生に大きな影響を与えました。滋賀県の「大津駐屯地」では、戦車の操縦訓練や格闘訓練、さらには自分のライフルを分解・清掃・組み立てる訓練など、多岐にわたる厳しい教育を受けていました。高校時代は陸上部で400mハードルを専門としていたため、運動神経は抜群でした。

中でも彼女が最も得意とするのが、「第5ほふく」と呼ばれる特殊なほふく前進です。これは一般的にイメージされるほふく前進とは異なり、完全に大の字に伏せ、顔を下に向けた状態で地面を這いながら進むという、高度な技術を要するものです。この「第5ほふく」は今でも家で練習するほど、彼女の体の一部となっています。全ての教育訓練を終えた際には、部活動で得た達成感をはるかに超える、計り知れない喜びと満足感があったと語っています。こうした経験が、現在の彼女の型破りな芸風や、どんな困難にも立ち向かう精神力の源になっているのかもしれません。

彼女の特異な経歴は、お笑い芸人としての表現に深みを与え、観客に強いインパクトを与えています。自衛隊での規律と体力、看護師としての人間理解、そしてモデルとしての表現力が、お笑いという「天職」でどのように昇華されていくのか、今後の活躍から目が離せません。

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