お笑いコンビ「オアシズ」のメンバーであり、多岐にわたるバラエティ番組で活躍を続ける大久保佳代子氏。1992年のデビュー以来、30年を超える芸歴の中で彼女がどのように人との関係性を育んできたのか、その核心に迫るエッセイ集『パジャマあるよと言われても』(マガジンハウス)から、その一部が公開されました。この連載で大久保氏は、変化し続ける自身の人生において、職場や学生時代から続く大切な人々との繋がりがどれほど重要であるかを赤裸々に語っています。本記事では、大久保氏が長年にわたり綴ってきた心温まる人間関係のエピソードに焦点を当て、その深掘りをおこないます。
芸の道で培われた「戦友」たちとの絆
大久保佳代子氏は、10年前と変わらない顔ぶれで今も交流を続けている同業者、特に独身の女性芸人仲間との絆について触れています。いとうあさこ氏、たんぽぽ・川村エミコ氏、森三中・黒沢かずこ氏といった面々は、まさに彼女にとって「安心と信頼」の存在です。同じ芸能界という特殊な環境に身を置く彼女たちは、仕事上の失敗談やテレビスタッフ、マネージャーへの不満、さらには道端のカップルへの愚痴に至るまで、あらゆる悩みを共有できる唯一無二の理解者であると大久保氏は語ります。
大久保佳代子氏が笑顔を見せる。彼女のエッセイ集では、芸歴30年を超える中での人とのつながりが語られている。
たとえ年に数回しか会えない同僚であっても、一度会えば絶大な信頼感と「戦友」のような連帯感が生まれると言います。余計な説明がなくても話がスムーズに進み、仕事のストレスを分かち合える存在は、芸能界で30年以上活動を続けてきた大久保氏にとって、本当にありがたい恵みであると感謝の念を述べています。男女問わず、素晴らしい同僚に恵まれたことは、彼女のキャリアを支える大きな要素となっているようです。
時を超えて深まる地元の「同級生」との交流
一方で、ここ最近、大久保氏の生活の中でその存在感を増しているのが、地元で学生時代を過ごした同級生たちです。ありがたいことに、学生時代からの親友の何人かは現在も独身で、50代になった彼女たちは、それぞれのペースで仕事をこなしながら、趣味の時間も大切にしています。数年前からは、年に一度の旅行も恒例となっており、これまでにタイ旅行、富士山登山、香川県の金比羅さん参拝などを共に楽しんできました。
大久保佳代子著『パジャマあるよと言われても』の書籍カバー。仕事仲間や学生時代の友人との絆について綴られたエッセイ集。
彼女たちと会って話し始めると、まるで高校時代に戻ったかのように、一瞬にして当時の関係性とノリになるのが不思議な魅力だと言います。金比羅さん参拝の前に名物の讃岐うどんを食べた際のエピソードでは、歯の治療中だったSちゃんがタコの天ぷらを注文し、噛み切れずに苦戦する姿をKちゃんと共に大爆笑したという一幕が語られました。この、何が面白いのか分からなくてもただひたすら笑い合える関係性は、高校生の頃と変わらない、かけがえのない宝物であると大久保氏は綴っています。
変化する人生の中での変わらない絆
大久保佳代子氏のエッセイは、彼女が芸歴30年を超え、50代という人生の節目を迎える中で、どのように人間関係が変化し、そして変わらずに支えとなっているかを深く考察しています。同業者との「戦友」のような絆、そして地元で年を重ねてきた「同級生」との無邪気な交流は、大久保氏の心に安らぎと活力を与える源泉です。自身の変化を認めつつも、大切な人々との普遍的な繋がりを再認識する彼女の視点は、多くの読者にとっても共感を呼ぶでしょう。これらの絆こそが、大久保氏の長いキャリアと豊かな人生を形成する上で不可欠な要素であることが、『パジャマあるよと言われても』のメッセージとして強く伝わってきます。
参考文献
- 大久保佳代子. 『パジャマあるよと言われても』. マガジンハウス, 2024年.
- 婦人公論.jp. 「大久保佳代子『パジャマあるよ』と言われた時の反応。10歳と28歳の違いに見る、人の変化の面白さ」. Yahoo!ニュース, 2024年8月14日配信.