韓国の脱北者団体「クンセム(大きな泉)」が、再び北朝鮮への物資漂流を試みました。11月1日、仁川広域市江華郡の席毛島から、コメや1ドル紙幣、駆虫薬、USBメモリなどを詰めたペットボトル300本を北朝鮮に向けて流そうとしたところ、地元行政当局に制止されました。今回は、北朝鮮からの拡声器による騒音被害に苦しむ住民への配慮から、江華郡が危険区域に指定し、ビラ散布などを禁止する行政命令を出した直後だったこともあり、緊張が高まりました。
物資漂流の背景と目的
クンセムは、北朝鮮の厳しい食糧事情や情報統制の現状を憂慮し、物資を詰めたペットボトルを海流に乗せて北朝鮮へ送る活動を続けています。彼らは、北朝鮮住民に少しでも支援を届けたいと考えており、コメや医薬品、そして外部情報に触れる機会を提供するためのUSBメモリなどを送っています。しかし、こうした活動は常に韓国当局との摩擦を生み出す原因ともなっています。
北朝鮮に物資を届けようとするクンセム(大きな泉)のメンバー
行政当局による制止と団体の反応
江華郡は、警察からの通報を受け、現場に職員を派遣。クンセムに対し、ペットボトル漂流を中止するよう説得しました。約30分後、クンセムは活動を中断し、現場を離れました。クンセムの関係者は、江華郡の主張を受け入れ、当面の間、ペットボトル漂流活動を中止する意向を示しました。しかし、今回の活動中止が北朝鮮の拡声器放送中止につながるのかについては疑問を呈しています。
江華郡の対応と住民の苦悩
江華郡の住民は、北朝鮮が軍事境界線付近に設置した拡声器による騒音被害に悩まされています。この問題を受け、江華郡は郡全域を危険区域に指定し、北朝鮮体制を批判するビラなどの散布行為を禁止する行政命令を発令しました。今回のクンセムの活動も、この行政命令に抵触する可能性があったため、当局は迅速な対応を迫られました。
コメなどの物資が入ったペットボトル
繰り返される漂流活動と今後の展望
クンセムは、今年6月にも江華島からコメを入れたペットボトルを北朝鮮に向けて流すなど、同様の活動を繰り返しています。南北関係の緊張が続く中、彼らの活動は物議を醸しています。人道支援の必要性と、政治的緊張の高まり、そして地元住民の生活への影響など、複雑に絡み合った問題の解決策を見出すのは容易ではありません。今後のクンセムの活動、そして南北関係の行方に注目が集まります。