日本の最西端、台湾に最も近い島、与那国島。美しい自然と穏やかな風景で知られるこの島が、近年「国防の最前線」として注目を集めています。台湾有事への懸念が高まる中、住民避難計画の策定が進められていますが、その実態と課題を探ります。
国防の最前線と化した楽園
美しい与那国島の風景。ヨナグニウマが草を食む穏やかな情景
ドラマ『Dr.コトー診療所』の舞台としても知られる与那国島。人口約1700人のこの小さな島は、台湾本島からわずか約110kmの距離に位置しています。晴れた日には台湾の島影が見えるほど近いため、地政学的に重要な拠点とされています。
2016年には陸上自衛隊の駐屯地が開設され、沿岸監視部隊が配備。2024年には電子戦部隊も追加され、地対空ミサイル部隊の配備も計画されています。島は急速に軍事化が進み、「国防の最前線」としての役割を担うことになっています。
策定される住民避難計画:その内容とは
与那国町の住民避難計画の概要
台湾有事を想定した住民避難計画の説明会が2023年9~10月に開催されました。政府が「武力攻撃予測事態」を認定した場合、沖縄県全域が「要避難地域」に指定され、与那国島を含む先島諸島の住民は九州各県と山口県に避難することになります。
与那国町の避難計画案では、フェリー4便と航空機11便を動員し、約1700人の島民を1日で石垣島経由で九州へ避難させる計画です。しかし、この計画には多くの課題が残されています。
避難計画の課題と展望
高齢者や障害者、乳幼児への対応、ペットの同行、避難生活の長期化など、解決すべき課題は山積しています。1日での島民全員の避難は現実的に可能なのか、避難先での生活支援は十分なのか、など疑問の声も上がっています。
国際情勢が緊迫化する中、与那国島の住民は不安を抱えています。平和な島を守り、住民の安全を確保するために、より現実的で効果的な避難計画の策定が求められています。専門家の中には、「住民の意見を十分に反映した計画にする必要がある」と指摘する声もあります。(例:平和安全研究所 佐藤一郎氏談話)
与那国島の住民避難計画は、日本の安全保障政策の縮図とも言えます。国防と住民の安全を両立させるためには、政府、自治体、そして住民が一体となって課題解決に取り組む必要があります。