近年、日本国内でベトナム人犯罪グループによる大規模な車両窃盗事件が相次いで発生しています。中古車販売店の展示車を標的にした犯行の実態、そしてその背景にある複雑な事情について、詳しく解説します。
旧ビッグモーターを狙った連続窃盗事件
2024年10月8日、埼玉県警察をはじめとする7県警の合同捜査本部は、ベトナム国籍の男5人を建造物侵入と窃盗の疑いで再逮捕しました。容疑は、2024年4月10日の深夜から翌朝にかけて、中古車販売大手WECARS(旧ビッグモーター)新潟南店に侵入し、乗用車7台と現金を盗んだことです。被害総額は約965万円に上ります。
この事件以前にも、2024年1月~4月上旬にかけて、群馬、埼玉、山梨、長野の旧ビッグモーター6店舗で同様の車両窃盗事件が頻発し、合計29台が盗まれていました。発見された車両もありますが、約3分の2は行方不明のままです。転売などにより闇ルートに流れた可能性が高いと見られています。
新潟の旧ビッグモーター店舗の防犯カメラ映像
住所不定・不法滞在の容疑者たち:「ボドイ」の実態
逮捕された5人は全員が住所不定で、うち4人は不法滞在者でした。ベトナム人の不法滞在者は「ボドイ」と呼ばれています。その多くは職場を逃亡した元技能実習生です。「ボドイ」はベトナム語で「兵士」や「部隊」を意味し、日本で困難な状況に立ち向かう自分たちを兵士になぞらえた呼称と言われています。
ほとんどの在日ベトナム人は善良な生活を送っていますが、ボドイの中には生活の不安定さから窃盗などの犯罪に手を染める者も少なくありません。令和時代に入り、日本国内の国籍別外国人犯罪率ではベトナムがトップとなっており、その大部分をボドイが占めているという現状があります。
巧妙化・組織化する手口:ブタや桃の窃盗から車両へ
数年前には、ボドイによるブタや桃の大量窃盗事件が話題になりました。生活苦から食料を盗んでいた当時とは異なり、近年は換金性の高いものを狙うようになり、手口も巧妙化・組織化しています。自動車窃盗事件はその一例と言えるでしょう。
専門家の見解
犯罪社会学者の田中一郎氏(仮名)は、次のように指摘します。「ボドイによる犯罪の増加は、技能実習制度の課題と密接に関係しています。低賃金、長時間労働、劣悪な労働環境などが逃亡の背景にあり、逃亡後の生活苦が犯罪に繋がっているケースが多いと考えられます。制度の改善と同時に、ボドイへの支援体制の強化も必要です。」
まとめ:社会全体で取り組むべき課題
ベトナム人犯罪グループによる車両窃盗事件は、単なる犯罪行為として片付けるのではなく、社会全体で取り組むべき課題として捉える必要があります。技能実習制度の改善、ボドイへの支援、そして多文化共生社会の実現に向けた努力が、犯罪の抑制に繋がるのではないでしょうか。