オンラインカジノの蔓延が社会問題となる中、SNSで多大な影響力を持つ「カリスマ」と呼ばれた男が、常習賭博容疑で警視庁に摘発されました。個人としては過去最大規模となる280億円超をオンラインカジノに賭けたとみられ、その実態と末路が明らかになっています。
オンラインカジノ賭博で「カリスマ」と呼ばれた男を称賛するインターネット掲示板の書き込み
SNSで崇拝された「カリスマ」の実像
摘発されたのは、X(旧ツイッター)上で「明鏡止水」というアカウント名を使用していた会社員の男(38)です。彼はオンラインカジノのバカラ賭博での勝利を頻繁にスクリーンショット画像とともに投稿し、自身の実績をアピールしていました。使用していたカジノサイト「Stake(ステーク)」では、最高ランクのVIPレベル「ダイヤモンド」に到達し、世界ランキングで20番台に入るほどのめり込みようでした。Xのフォロワー数は最大時には2万7千人を超え、オンラインカジノ界隈で「カリスマ」として知られる存在となっていました。インターネット掲示板にも、彼を称賛する書き込みが多数見受けられました。
破滅への道のり:巨額賭博と「必勝法」研究の果てに
捜査関係者によると、男がオンラインカジノに手を染めたのは平成元年頃に遡ります。初めて勝った時の強烈な成功体験が忘れられず、賭博は常習化していきました。自宅だけでなく、移動中の電車内や仕事の休憩時間といったわずかな時間も見つけては賭けに興じていたといいます。彼は単に運任せにするのではなく、「必勝法」を確立しようと、賭け額や勝敗をこまめに記録し、ノートには図や研究成果を書き残していました。プレー時間は1日あたり4~5時間、週に5日ほどの頻度でしたが、多い時には1日で23時間もプレーし、1日の賭け金が7億円に達したこともあったと供述しています。令和4年に開設したXアカウント名「明鏡止水」は、「邪念のない澄み切った心境」を意味する四字熟語で、バカラで冷静に勝負するための戒めとして付けたと語っています。
摘発されたオンラインカジノ賭博の男が「必勝法」を研究し記録したノートの画像
アフィリエイト活動と最終的な結末
男は自身の賭博だけでなく、カジノサイトを他のユーザーに紹介し、運営側から報酬を得る「アフィリエイター」としても活動していました。100人以上をオンラインカジノに勧誘し、紹介報酬として約700万円を得ていたとみられます。しかし、個人として過去最大の280億円超という巨額を賭けにつぎ込んだにもかかわらず、最終的に彼の元に財産はほとんど残らなかったとされています。
この男の事例は、オンラインカジノの危険性と依存性の深さ、そしてSNSを通じた影響力の大きさを改めて示しています。多額の資金を投じ、「カリスマ」と崇められながらも、最終的に財産をほとんど失ったという結末は、オンラインカジノの裏側にある厳しい現実を浮き彫りにしています。スポーツ界や芸能界にも広がりを見せ、摘発が相次ぐ現状を受け、規制を強化する改正ギャンブル依存症対策基本法も成立するなど、今後も同様の摘発や対策が進むとみられます。