世界中で猛威を振るう「殺人豪雨」:その脅威と日本の備え

近年の異常気象、特に集中豪雨による被害が世界中で深刻化しています。記憶に新しいベトナム、ミャンマーでの台風11号による甚大な被害、そしてヨーロッパ中東欧を襲った未曾有の大雨。これらの災害は、私たちに「殺人豪雨」の脅威を改めて突きつけています。一体何が起きているのでしょうか?そして、日本への影響は?この記事では、専門家の知見を交えながら、その実態と対策について迫ります。

温暖化が招く豪雨災害の連鎖

2024年9月、台風11号がベトナムに上陸し、甚大な被害をもたらしました。250人以上の死者、4900億円規模の経済損失。ミャンマーでも220人もの尊い命が奪われ、63万人が被災しました。さらに、同時期にヨーロッパ中東欧でも集中豪雨が猛威を振るい、チェコでは8人が死亡、25万世帯が停電する事態に。

altベトナムの洪水被害altベトナムの洪水被害

これらの豪雨災害の背景には、地球温暖化の影響が色濃く出ています。三重大学生物資源学部の立花義裕教授は、ヨーロッパの豪雨について、寒冷渦(寒気を伴った低気圧)が偏西風の弱まりによって停滞し、海水温の上昇によって大量の水蒸気を含んだことが原因だと指摘します。ベトナム、ミャンマーの豪雨も、温暖化による海水温の上昇が台風11号を勢力を強めた要因の一つです。

偏西風の蛇行と豪雨の発生メカニズム

立花教授は、近年、台風や低気圧が停滞する原因を「温暖化による偏西風の変化」にあると分析します。北極の温暖化により、低緯度地域との温度差が縮小。その結果、偏西風が弱まり、蛇行しやすくなっています。本来は偏西風に乗って移動するはずの低気圧や前線が特定の地域に停滞し、豪雨をもたらすのです。気象予報士の村山貢司氏も、24時間降水量200mmを超えるような豪雨が当たり前になりつつあると警鐘を鳴らします。東京23区で同規模の豪雨が起きた場合、江東区や江戸川区などの海抜0m地帯を中心に、数百人規模の犠牲者が出る可能性もあると指摘しています。

日本への影響と対策の必要性

気象庁のデータによると、1時間に80mm以上の猛烈な雨の発生頻度は、この40年で約2倍に増加しています。日本近海でも海水温は上昇傾向にあり、大雨が発生しやすい状況が続いています。村山氏は、ベトナムやミャンマーで起きたような災害は、日本でも起こりうると警告しています。もはや、一国だけの問題ではなく、地球規模での対策が急務です。

私たちにできること

豪雨災害から身を守るためには、日頃からの備えが重要です。ハザードマップを確認し、避難場所や経路を把握しておくこと、非常持ち出し袋の準備、そして気象情報に常に注意を払うこと。これらの対策を怠らず、一人ひとりが防災意識を高めることが、被害を最小限に抑えることに繋がります。