タワーマンション配達、物流業界の新たな難題:時間とコストを圧迫する意外な落とし穴

日本の都市部で増加するタワーマンション。一見、多くの世帯が集積しているため配達効率が良いように思えますが、実際は物流業界にとって大きな課題となっています。この記事では、タワーマンション配達がなぜ物流の「2024年問題」を深刻化させるのか、その実態と課題に迫ります。

タワーマンション配達の現実:過疎地よりも過酷な労働環境

ある大手宅配事業者の関係者は、「タワーマンションへの配達は過疎地よりも大変な場合が多く、赤字前提。別料金を頂戴したいくらいだ」と嘆きます。ドライバーの時間外労働時間の上限規制が強化される中、タワーマンション配達は物流業界の人手不足に拍車をかける要因となっています。

日鉄興和不動産の調査によると、都内のあるタワーマンション(約50階・約1000戸)では、1日の配達27件、集荷5件、不在5件の作業に計255分かかりました。驚くべきことに、そのうちの87分(全体の約3分の1)はエレベーターの待ち時間と乗車時間。マンション内移動時間全体では、作業時間の約半分を占めています。

東京都内のタワーマンションの例東京都内のタワーマンションの例

なぜマンション内移動に時間がかかるのか?複雑なセキュリティと広大な敷地

タワーマンション配達では、配達員は住民とは別の入り口から入り、警備室で受付を行います。警備室を通して配達先の在宅確認後、事業者用エレベーターを利用しますが、他の業者との共用のため待ち時間が発生します。さらに、戸数の多いタワーマンションでは、配達先を探すだけでも時間を要します。この一連の作業を、配達件数分繰り返す必要があるのです。

セキュリティーの厳しい物件では、1回の配達に30分以上かかるケースも珍しくありません。例えば、50階建て以上、約600戸のタワーマンションでは、1回の配達で複数のセキュリティチェックが必要となる場合があり、配達員の負担をさらに増大させています。

宅配ボックスの限界と駐車スペース不足:さらなる課題

集合住宅では不在時に宅配ボックスを利用するのが一般的ですが、ボックスの満杯やサイズの問題で再配達が必要となる場合があり、コスト増加につながります。また、タワーマンションでは業者用駐車スペースが不足していることも多く、他の業者との争奪戦になることも。

配達員が作業に要した時間の内訳配達員が作業に要した時間の内訳

物流業界の未来:効率化への取り組み

これらの課題に対し、物流業界は効率化に向けた様々な取り組みを模索しています。例えば、宅配ボックスの増設や、AIを活用した配達ルート最適化など。物流業界の専門家である山田太郎氏(仮名)は、「テクノロジーの活用だけでなく、マンション管理会社との連携強化も不可欠」と指摘しています。

まとめ:タワーマンション配達の課題解決に向けて

タワーマンション配達は、物流業界にとって大きな課題となっています。セキュリティ、広大な敷地、宅配ボックスの限界、駐車スペース不足など、様々な要因が重なり、配達員の負担を増大させています。物流業界の「2024年問題」解決のためにも、関係者間の協力と新たなソリューションの開発が急務です。