袴田巌さん。88歳。2024年10月9日、袴田さんの無罪がついに確定しました。1966年の事件発生から実に58年、死刑確定から44年という長い歳月を経て、ようやく自由の身となったのです。 この記事では、日本最大級の冤罪事件と言われる「袴田事件」の真相、そして未だ闇に包まれた真犯人の存在に迫ります。
袴田事件とは? 繰り返された冤罪の悲劇
1966年、静岡県清水市(現静岡市清水区)の味噌製造会社「こがね味噌」専務一家4人が殺害され、放火されるという痛ましい事件が発生しました。当時、同社従業員だった元プロボクサーの袴田巌さんが逮捕され、死刑判決を受けました。しかし、この事件には多くの疑問点が残り、再審請求が繰り返されてきました。
袴田巌さんと姉のひで子さん
拷問による自白の強要、そして「拷問王」の存在
袴田事件における最大の証拠とされたのは、袴田さん自身の「自白」でした。しかし、この自白は、過酷な拷問によって強要されたものだったのです。静岡県警には、過去にも幸浦事件、二俣事件、島田事件といった冤罪事件に関与した「拷問王」と呼ばれた紅林麻雄警部補とその部下である羽切平一警部がいました。彼らは、非人道的な取調べ方法で袴田さんを精神的に追い詰め、自白に追い込んだのです。ジャーナリストの藤原聡氏によると、袴田さんはトイレにも行かせてもらえず、長時間 interrogation room に監禁され、暴力も受けていたとのことです。
最高裁の死刑判決、その裏に隠された「思い込み」
多くの疑問点、そして冤罪の可能性が囁かれていたにも関わらず、最高裁は袴田さんに死刑判決を下しました。藤原氏によると、この判決は、担当調査官の「警察が捏造するはずがない」という思い込みによるものだった可能性が高いといいます。調査官は、膨大な量の事件資料を精査する過程で、重要な証拠を見落としたり、軽視したりした可能性が指摘されています。
真犯人は誰なのか? 浮かび上がる「有力な容疑者」
袴田さんの無罪は確定しましたが、真犯人は未だ不明です。しかし、藤原氏の調査によって、「こがね味噌」会計係のT氏と、暴力団幹部のI組員が有力な容疑者として浮上しました。T氏は多額の借金を抱えており、事件発生の2日後に逮捕されています。また、I組員は事件前に被害者宅を頻繁に訪れていたという証言もあります。藤原氏は、犯行動機を怨恨とみており、複数犯行の可能性も指摘しています。
平凡な幸せを取り戻した袴田さん
58年もの間、冤罪の苦しみを味わってきた袴田さんは、現在、姉のひで子さんと共に、マンションの最上階で暮らしています。そこには、支援者からプレゼントされた2匹の猫も加わり、穏やかな日々を送っているそうです。
袴田さんと猫
袴田事件は、日本の司法制度の闇を浮き彫りにした重大な事件です。真犯人が捕まり、真実が明らかになることを願うとともに、二度とこのような冤罪事件が起きないよう、司法制度の改革が求められています。