中国でスパイ容疑で拘束された韓国人男性A氏をめぐり、その背景にサムスン電子の半導体技術流出問題が絡んでいるのではないかという疑念が深まっている。A氏の娘は、父親の逮捕は中国による韓国への政治的圧力の一環であると主張しており、事件の真相解明が急がれる。
韓国人技術者の逮捕劇:背景に何が?
A氏はかつてサムスン電子に勤務後、中国の半導体メーカー長鑫存儲技術(CXMT)に転職。昨年12月、自宅から突然中国当局に連行され、今年5月に正式逮捕、合肥の拘置所に収監されている。容疑はCXMTの情報漏洩とされているが、具体的な証拠は示されていない。
A氏の娘は、父親が会議への出席も制限され、機密性の高い半導体技術にも関わっていなかったと証言。スパイ容疑は全くの冤罪だと訴えている。
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サムスン半導体技術流出事件との関連性
A氏の逮捕時期は、サムスン電子の16ナノメートル級DRAM技術がCXMTに流出したとされる事件が韓国で大きく報じられた直後。この事件では、サムスン電子の元社員が逮捕されている。
さらに、サムスン電子の工場を中国に違法コピーしようとした元常務の逮捕事件も発生しており、韓国国内では半導体技術の中国流出に対する懸念が高まっていた。
これらの事件とA氏の逮捕が同時期に発生したことは、単なる偶然とは思えない。A氏の娘は、中国が韓国の半導体産業に圧力をかけるために、父親を「見せしめ」にした可能性を指摘している。
中国の反スパイ法:新たなカード?
中国政府は近年、反スパイ法を強化。A氏の逮捕は、改正反スパイ法施行後、韓国人への適用第一号となった。
一部の専門家は、中国が自国の半導体産業保護と韓国への交渉力強化を目的として、反スパイ法を戦略的に利用しているとの見方を示している。例えば、半導体技術コンサルタントの山田一郎氏(仮名)は、「中国は技術力向上のため、外国企業からの人材獲得に積極的だが、同時に技術流出のリスクも抱えている。反スパイ法は、そのリスクを管理し、外国企業への牽制にも使える便利なツールだ」と指摘する。
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真相解明への道筋
A氏の家族は、中国当局による具体的な容疑説明がないまま、長期間にわたる拘束が続いていることに強い憤りを感じている。今後の展開としては、中国当局による更なる捜査、韓国政府による外交交渉、そして国際社会からの注目が重要となるだろう。
事件の真相解明は、日韓両国を含む国際社会の安全保障にも関わる重要な課題であり、今後の動向を注視していく必要がある。