火葬場――そこは人生の終着点であり、多くの謎に包まれた場所。元火葬場職員の下駄華緒氏の著書『最期の火を灯す者 火葬場で働く僕の日常』(漫画:蓮古田二郎)は、そのベールを一枚剥がす衝撃的な内容で話題を呼んでいます。今回は、特に鉄道人身事故で亡くなった方の火葬にまつわる知られざるエピソードをご紹介します。
人身事故と火葬:線路の石に込められた想い
鉄道人身事故で亡くなった方の火葬では、驚くべきことに、ご遺体の傍らに線路の石が多数混入しているケースがあるといいます。一体なぜでしょうか?
線路の石とご遺体
下駄氏によると、ある人身事故のケースでは、バラバラになったご遺体と共に、線路の石と思われる小石が無数に散らばっていたそうです。直葬であったため、納棺師による修復が行われず、事故現場の状況がそのまま火葬場に持ち込まれたとのこと。
ベテラン職員の尾知氏は、これは駅員による故人への敬意の表れだと推察します。バラバラになったご遺体を丁寧に拾い集める際、一片も残さぬよう、そして事件化を防ぐため、小石まで一緒に収容したのではないか、と。
このエピソードは、想像をはるかに超える火葬場の現実を私たちに突きつけます。同時に、ご遺体と真摯に向き合う駅員たちの深い想いが伝わってくるようです。
尊厳死:様々な状況における火葬の現実
火葬の様子
下駄氏によれば、人身事故以外にも、孤独死などでご遺体の損傷が激しい場合、身の回りのものと一緒に納体袋に入れられるケースもあるそうです。
火葬という儀式は、故人の尊厳を守る最後の砦。どのような状況であれ、火葬場職員は真摯にご遺体に向き合い、丁寧に火葬を行うといいます。
火葬のプロフェッショナル:故人の最期を彩る
ある葬儀業界の専門家(氏名非公開)は、「火葬は単なる遺体の処理ではなく、故人の魂を天に送る神聖な儀式。火葬場職員の仕事は、遺族の悲しみを和らげ、故人の最期を美しく飾ること」と語っています。
命の尊厳:最期の火を見送る者たち
火葬場という特殊な環境で働く職員たちは、日々、命の尊厳と向き合っています。彼らの献身的な仕事は、私たちが普段意識することのない死の現実を改めて考えさせ、命の大切さを教えてくれるのではないでしょうか。
今回紹介した人身事故のケースでは、未来ある若者が突然命を落としました。お骨上げでは、職員たちは石を丁寧に除き、可能な限り元の姿に戻したといいます。
どのような形であれ、命の最後に真摯に向き合い、故人を丁寧に見送る――それが火葬場職員の使命であり、誇りなのです。