「若者の政治離れ」が叫ばれる一方で、選挙権を持たない若い世代が政治に対して積極的に声を上げ始めている。彼らはなぜ政治に関心を持ち、現在どのような主張を展開しているのか。特に、7月20日に投開票を控える参議院選挙を前に、政治への真剣な思いを抱く10代の声を掘り下げる。ここでは、兵庫県尼崎市出身の高校生ラッパー、ISSHIN氏(18歳)の活動と主張を中心に紹介する。
高校生ラッパー ISSHIN氏の政治参加への主張
ISSHIN氏は、自作の楽曲「tohyoken」を通じて、若者を冷遇する社会構造を批判し、政治参加の重要性を訴えている。「若い者の投票率は 年功序列式の 日本学校が作る どうせ言っても変わらない 言ってるうちはだだ下がり」とラップで表現するように、既存の政治体制への疑問を投げかける。彼の主張の核心は、若者の政治参加の必要性と、被選挙権年齢の引き下げだ。彼は、政治の場に同世代の代表者が少ないことが、若者の政治への関心を低下させている一因だと指摘する。議会における議論が現役世代の実感からかけ離れていると感じており、若い議員が増えることが同世代の関心を高める鍵となると考えている。
また、ISSHIN氏は公職選挙法における未成年者の選挙運動禁止規定に直面し、「18歳未満にも選挙で応援する自由を」訴訟の原告を務めている。未成年であるというだけで特定の候補者を応援できない現状を変えたいという強い思いが、彼をこの訴訟へと駆り立てた。「成人前に応援したい候補者について調べた際、公職選挙法で禁止されていると知り愕然とした。この制度を変えたい一心で原告になった」と語る。
若者の政治参加をラップで訴える高校生ISSHIN氏
「ブラック校則」への疑問から始まった政治への関心
ISSHIN氏が政治に興味を持つようになったきっかけは、自身の学校における「ブラック校則」に対する疑問だった。彼の中学校には、ツーブロック禁止や眉毛に髪がかかることの禁止といった理不尽に感じられる校則が存在した。この問題意識から、青少年向けの活動支援施設を利用し、中高生251人を対象に校則に関するアンケートを実施。集めた意見を尼崎市に提出した結果、校則見直しに向けたガイドライン策定につながったという。この経験が、政治が自身の生活に直接的に影響を与えるものであるという認識を深め、政治への関心を高める契機となった。
今年5月に18歳を迎え、念願の選挙権を得たISSHIN氏は、6月に行われた地元の尼崎市議会議員選挙で初めての投票を経験した。自身の活動が同世代に影響を与えたことについて、「同世代のラッパー仲間が、僕の存在をきっかけに投票に行ったと話してくれたのが嬉しかった」と述べている。彼の個人的な活動が、周囲の人々を行動へと駆り立てた事実は、若者の政治参加を促す上での可能性を示唆している。ISSHIN氏は、自身の経験から、選挙運動の年齢制限撤廃や被選挙権年齢の引き下げが実現すれば、政治に関心を持つ若者がさらに増加すると確信している。政治は自身の生活に直結しているからこそ、今後も積極的に声を上げ続けると語っている。
若者の声が社会を動かす力に
若きラッパーであるISSHIN氏の反骨精神と行動力は、確実に同世代の間で波紋を広げている。彼の活動は、「若者の政治離れ」というステレオタイプに疑問を投げかけ、若い世代が社会や政治に対して強い問題意識を持ち、変化を求める声を上げ始めている現実を浮き彫りにする。選挙権を持つ者も持たない者も、自分たちの生活や未来に直結する政治に対し、当事者として声を上げていくことの重要性をISSHIN氏は体現している。このような若者世代からの当事者の声は、これからの日本社会においてますます重要な意味を持って響いていくだろう。