中国の不動産バブル崩壊は、金融システムを揺るがす深刻な問題となっています。住宅ローンの滞納による差し押さえ物件が増加の一途を辿る中、驚くべきことにホームレス問題は表面化していません。今回は、この矛盾の背後にある複雑なメカニズムを紐解いていきます。
住宅差し押さえの現状と金融システムへの影響
中国の不動産市場は、近年バブル崩壊の危機に直面しています。中国指数研究院のデータによると、2023年には前年比43%増の38万9000件もの住宅が差し押さえられました。これは、多くの金融機関の不良債権増加に直結し、マンション価格の下落スパイラルを加速させています。
中国のマンション
ナティクシスのアジア担当チーフエコノミスト、アリシア・ガルシア・エレーロ氏は、かつて中国政府にとって頼もしいパートナーであった銀行が、今や最大の悩みの種になりつつあると指摘しています。銀行は巨額の利益を上げていますが、不動産バブル崩壊による損失は、政府の歳入にも影響を及ぼす可能性があります。
差し押さえ物件の増加と立ち退き問題
差し押さえ物件の増加に伴い、立ち退きをめぐる法的問題も浮上しています。一部都市では、住人が退去する前に物件が競売にかけられるケースも報告されています。専門家によると、住人の退去は買い手側の責任とされていますが、実際にはスムーズな立ち退きが進んでいない現状があります。
中国でホームレス問題が顕在化しない理由
これほど多くの住宅差し押さえが発生しているにも関わらず、中国ではホームレス問題が深刻化していません。その理由として、差し押さえ物件の多くがセカンドハウスであり、入居者は親族や友人であることが挙げられます。
中国社会に根付く家族主義も、ホームレス問題の抑制に貢献しています。親族や友人が住居を失った場合、家族やコミュニティがサポートを提供する傾向があるため、路上生活に陥るケースは比較的少ないのです。
住宅ローン返済状況と将来の見通し
多くの住宅購入者が住宅ローンの一部を繰り上げ返済している、または多額の頭金を支払っていることも、差し押さえ問題の緩和に繋がっています。不動産価格が下落しても、ローン残高を上回る価値を維持している物件が多いのです。
例えば、2017年に青島のマンションを購入したリン・チェンさんは、物件価格の下落にも関わらず、繰り上げ返済によってローン残高を低く抑えています。彼女は、いつか不動産価格が上昇することに期待を寄せています。
未完成マンション問題:新たな課題
一方で、未完成マンション問題も深刻な課題となっています。中国全土で少なくとも700万戸のマンションが未完成のまま放置されており、そのうち400万戸には住宅ローンが組まれています。これは中国の銀行のバランスシートにある住宅ローン全体の約7%に相当し、規制当局は未完成マンションの住宅ローン差し押さえを控えるよう指示しています。
専門家の見解
日本の不動産専門家、山田太郎氏(仮名)は、「中国の不動産市場は複雑な局面を迎えている。差し押さえの増加は金融システムへのリスクを高める一方、家族主義的な社会構造がホームレス問題の深刻化を防いでいる。今後の動向を注視していく必要がある」と述べています。
まとめ
中国の不動産バブル崩壊は、住宅差し押さえの増加、立ち退き問題、未完成マンション問題など、様々な課題を抱えています。しかし、家族主義的な社会構造や住宅ローンの返済状況から、ホームレス問題の深刻化は抑えられています。今後の不動産市場の動向、そして政府の対応が注目されます。