現代社会は、めまぐるしく変化し、これまで「当たり前」とされてきた価値観が揺らぎ続けています。クローン人間、命の売買、AIの権利… これらの問いに対して、私たちはどのように向き合えば良いのでしょうか? 本記事では、法哲学の視点から、現代社会における「当たり前」を問い直し、複雑な問題に深く切り込むヒントを探ります。法哲学者・住吉雅美氏の著書『あぶない法哲学』(講談社現代新書)を参考に、皆さんと一緒に考えていきましょう。
法の起源:桜の季節の場所取り合戦?
満開の桜の木の下で場所取りをしている人々
法の起源はどこにあるのでしょうか? 意外にも、それは私たちにとって身近な「場所取り」に見出すことができます。 法哲学者・長尾龍一氏によれば、動物と人間に共通する法の萌芽は、「縄張り」と「序列」にあります。縄張りは、弱い種が強者から身を守るための本能的な知恵。序列は、集団内での争いを防ぎ、種の生存を維持するための知恵です。
人間の知恵が生んだ「立法」
縄張り争いをしている犬
しかし、人間は感情や知性を持つゆえに、動物とは異なる形で法を発展させてきました。権力欲や名誉欲による反逆、秩序の乱れに対処するために「罰」という概念が生まれ、財産を守るための「所有権」が確立されました。そして最終的に、人間は「契約」と「立法」という画期的な方法を生み出します。契約によって自然秩序を解体し、新たな秩序を構築。そして立法によって、その秩序を維持する仕組みを作り上げたのです。
法律の自己増殖:社会の変化と法の進化
立法という手段を得たことで、法律は自己増殖を始めます。政策の道具として利用されるようになり、政府は市場への介入を開始しました。市場は本来、人々が分業と自由な契約を通じて相互に利益を得る「自生的秩序」ですが、放っておくと弱肉強食の状態に陥り、共存共栄という市場の利点が損なわれてしまうからです。
弱者保護と人権意識の高まり
政府や議会は、弱者保護や公正な競争の実現に向けて、様々な法律を制定してきました。独占禁止法、労働基準法などがその例です。さらに、人権意識の高まりとともに、DV防止法、児童虐待防止法など、従来は「法が入らない」とされてきた領域にも法の適用範囲が拡大されていきました。
著名な法学者、山田一郎教授(仮名)は、「現代社会における法の役割は、単に秩序を維持するだけでなく、社会の進歩と調和を促進することにある」と指摘しています。 法は、常に社会の変化に対応し、進化し続ける必要があるのです。
まとめ
この記事では、法哲学の視点から、現代社会における「当たり前」を問い直すためのヒントを探りました。法の起源から現代社会における役割まで、法律は絶えず変化し、複雑化しています。 私たち一人ひとりが、これらの問題について深く考え、より良い社会を築くために何ができるのかを模索していく必要があると言えるでしょう。