参院選で注目を集めた参政党が、内部的な混乱と「言論封殺」ともとれる異例の裁判に直面している。神谷宗幣代表(47)は街頭演説で次期総選挙後の「与党入り」を語るなど勢いを見せる一方で、党内部では複数の問題が報じられている。特に、元秘書への訴訟と、元女性秘書の突然の死を巡るパワハラ告発は、党の透明性と信頼性に疑問を投げかけている。
メディアへの圧力と「言論封殺」の背景
2024年7月12日、TBSの「報道特集」が参政党について「“外国人が優遇されている”などと訴え、犯罪や生活保護について強硬な主張を繰り返す」と報じた。これに対し参政党は翌日、「選挙報道として著しく公平性・中立性を欠く」と抗議し、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送人権委員会へ申し立てを行う事態に発展した。専門家からは、このような動きを「報道機関への圧力だ」と指摘する声も上がっており、参政党が以前から“言論封殺”ともとれる姿勢を見せてきた可能性が示唆されている。
元秘書の自殺とパワハラ疑惑:桜井由梨氏の証言
「参政党からの訴状が届いたのは、昨年3月末のことです」と語るのは、元参政党秘書の桜井由梨さん(仮名)だ。20代の桜井さんは2022年9月に参政党の職員として採用され、翌年2月からは神谷代表の秘書を兼任した。しかし、9カ月後の2023年11月、彼女は退職に至った。桜井さんは、神谷代表が元中部大学特任教授の武田邦彦氏ら当時の幹部と対立し、最終的に彼らを党から「追い出してしまった」経緯に不信感を募らせ、党を離れる決断をしたという。桜井さんが退職した翌月の2023年12月、彼女が慕っていた50代の元女性秘書Aさんが突然自殺するという衝撃的なニュースが飛び込んできた。参政党関係者によると、「Aさんは神谷代表の秘書を務めた後、党務に従事していましたが、23年9月に退職。その3カ月後に自ら命を絶ちました。自殺の裏には、神谷代表の“パワハラ的言動”があったとささやかれています」と明かされている。
参政党代表の神谷宗幣氏。党の内部問題と元秘書への訴訟、パワハラ疑惑が報じられている。
YouTube告発と参政党の対応
桜井さんは、Aさんと同じ思いを抱える人が党内にいるならば、彼女と同じ道をたどってほしくないという強い思いから、YouTubeチャンネル「巫女ねこちゃんねる」の動画に出演し、自らの経験とAさんに関する情報を告発した。動画の中で桜井さんは、Aさんが党のタウンミーティングを統括していた際、集客状況が悪いと神谷代表から「どうしてなんだ」などと厳しく問い詰められていたことを明かしている。また、全体会議で発言するAさんの声は震えており、神谷代表にすっかり萎縮している様子だったという。参政党にとって、元秘書の自殺の背景を語る桜井さんの存在は「目障り」と映ったに違いない。わずか約1年間しか党に在籍していなかった桜井さんを訴えた背景には、このような動機があったと見られている。
参政党は現在、飛躍的な党勢拡大を目指す中で、内部の「言論封殺」疑惑やパワハラ告発、そしてそれらに伴う異例の裁判という複雑な問題に直面している。これらの内部問題が、党の掲げる透明性や国民からの信頼にどのような影響を与えるか、今後の動向が注目される。党としての説明責任と、報道機関への対応が、その真価を問われることになるだろう。