中国江蘇省無錫市の職業訓練学校で、21歳の元学生による無差別殺傷事件が発生し、8人が死亡、17人が負傷するという痛ましい事件が起こりました。この事件は、習近平国家主席が治安対策強化を指示した直後に発生したこともあり、中国社会に大きな衝撃を与えています。
卒業証書取得できず、就職難から犯行か？
地元当局の発表によると、犯人は現場で取り押さえられました。捜査の結果、犯人は卒業前の試験に失敗し、就職に必須となる卒業証書を取得できなかったこと、さらに実習先での待遇への不満が動機とみられています。
無錫市の職業訓練学校での事件現場
香港の有力紙・明報は、犯人が書いたとされる遺書がインターネット上に公開されたと報じています。遺書には、長時間労働や賃金未払いといった工場や学校への不満、そして「自らの死で労働法を改善する」という主張が綴られていたとのことです。在上海日本総領事館によると、被害者に日本人は含まれていないことが確認されています。
中国で相次ぐ無差別殺傷事件、社会不安の高まり
中国では近年、公共の場で無差別に住民が襲われる事件が相次いで発生しています。わずか数日前には、広東省珠海市で車が暴走し、35人が死亡する事件が発生したばかりでした。習近平主席は関係部門に対し、極端な事件の防止と国民の生命の安全確保を指示していましたが、今回の事件はその直後に発生したという点で、当局の危機感はさらに高まっていると予想されます。
事件現場の様子
今回の無錫での事件では、事件直後にネット上に流出した現場写真や動画がすぐに削除されました。中国メディアの報道も当局発表に基づくものがほとんどで、情報統制が徹底されている様子がうかがえます。これは、社会不安の拡大を抑え込む狙いがあるとみられています。
経済格差の拡大、経済低迷が背景に？
こうした事件の背景には、中国社会における収入格差の拡大や経済低迷といった問題が指摘されています。SNS上では「また起きたのか」という不安の声や、根本的な社会問題の解決なくして事件の再発は防げないといった意見も出ています。
中国外務省は「中国は世界で最も安全な国の一つ」と主張していますが、相次ぐ事件は国民の不安を払拭するには至っていません。今後の中国社会の動向に注目が集まっています。
