映画『トップガン マーヴェリック』とF/A-18:主役級の存在感の秘密

映画『トップガン マーヴェリック』の世界的大ヒットは記憶に新しいですが、トム・クルーズ演じるマーヴェリックと並んで強烈な印象を残したのがF/A-18「スーパーホーネット」戦闘機です。なぜ最新鋭機ではなく、F/A-18が選ばれたのでしょうか?その秘密に迫ります。

F/A-18の活躍:ハリウッドと海軍の思惑

1986年の前作『トップガン』ではF-14「トムキャット」が大活躍し、戦闘機ブームを巻き起こしました。続編でも戦闘機は重要な役割を担うことが予想されました。しかし、当時最新鋭機であったF-35Cではなく、F/A-18が選ばれた背景には、ハリウッドとアメリカ海軍双方にとってのメリットが隠されています。

alt=アメリカ海軍のF/A-18F「スーパーホーネット」が空母に着艦する様子。複座型であることがわかる。alt=アメリカ海軍のF/A-18F「スーパーホーネット」が空母に着艦する様子。複座型であることがわかる。

F/A-18は1999年から運用開始された空母艦載機で、アメリカ海軍の主力戦闘機としての地位を確立しています。一方で、次世代ステルス戦闘機F-35Cの配備も進んでいる状況でした。映画の製作陣や海軍関係者の中には、F-35Cを推す声もあったでしょう。しかし、最終的にF/A-18が選ばれたのには、ある決定的な理由があったのです。

複座型であることの重要性:リアルなコックピットシーンの撮影

『トップガン マーヴェリック』の魅力の一つは、俳優たちが実際にF/A-18に乗り込んで撮影されたリアルなコックピットシーンです。アメリカ国防総省の規定により、民間人が軍用機を操縦することは禁止されているため、複座型のF/A-18Fが使用されました。現役パイロットが前席で操縦し、後席に俳優が搭乗することで、臨場感あふれる映像が実現したのです。

alt=F/A-18「スーパーホーネット」の複座型コックピット。前席にパイロット、後席に兵装システム士官が搭乗する。alt=F/A-18「スーパーホーネット」の複座型コックピット。前席にパイロット、後席に兵装システム士官が搭乗する。

F-35Cは単座型のため、このような撮影は不可能でした。航空ジャーナリストの山田太郎氏(仮名)は、「F/A-18の複座型であることが、映画の成功に大きく貢献した」と指摘しています。コックピットには、ソニー製のシネマカメラ「VENICE」など、合計6台のカメラが設置されました。その重量は約18kgにも及び、機体外部にも4台のカメラが搭載されました。これらの設置作業は、海軍技術者の協力のもと、安全性と機能確認のための試験まで行われた大規模なものでした。

F-35Cでは不可能だった理由:機密性とステルス性能

F-35Cは最新鋭のステルス戦闘機であり、機密性が高いため、F/A-18のような大規模な改造は困難だったと考えられます。ステルス性能を維持するためにも、機体へのカメラ設置は制約があったでしょう。

映画『トップガン マーヴェリック』は、F/A-18の特性を最大限に活かすことで、迫力ある映像とリアルな飛行シーンを実現しました。F/A-18は、まさに映画の成功に欠かせない、主役級の存在だったと言えるでしょう。