「106万円の壁」撤廃:日商会頭、企業負担増に懸念表明

日本商工会議所の小林健会頭は18日、厚生年金の加入要件である「106万円の壁」撤廃に伴う企業負担増への懸念を表明しました。定例記者会見の場で、小林氏は「保険料負担を企業側に押し付けるのは不公平であり、企業により多くの負担を求める理由はない」と強く主張。特に小規模事業者への影響を憂慮し、政府による財政措置による負担軽減の必要性を訴えました。

企業への負担増、その実態と懸念

現在、厚生年金への加入要件は年収106万円以上となっており、この「壁」を撤廃することで、より多くのパートタイム労働者などが厚生年金に加入することになります。これにより、将来の年金受給額が増加するというメリットがある一方、企業側にとっては保険料負担が増加するというデメリットも存在します。小林会頭は、この負担増が特に小規模事業者にとって大きな打撃となりかねない点を強調しました。

小林健会頭が記者会見で発言する様子小林健会頭が記者会見で発言する様子

厚生労働省は、働く人の新たな保険料負担を軽減するため、企業が保険料を肩代わりする案を検討しています。しかし、小林会頭はこの案に異議を唱え、「労使で折半している保険料を、企業側に一方的に負担させるのは不公平だ」と述べました。 企業にとって、人件費は大きな経営課題であり、保険料負担の増加は経営を圧迫する要因となります。特に、中小企業や個人事業主にとっては、負担増に耐えきれず、事業の継続が困難になる可能性も懸念されます。

財政措置による負担軽減の必要性

小林会頭は、政府が財政措置を講じ、企業の負担を軽減する必要があると訴えました。「106万円の壁」撤廃は、社会保障制度の持続可能性を高める上で重要な施策ですが、その実現には企業への負担増という課題がつきまといます。この課題を解決するためには、政府による適切な財政支援が不可欠です。例えば、保険料の一部を国庫負担とする、あるいは企業への補助金を増額するなどの措置が考えられます。

従業員への影響と今後の展望

「106万円の壁」撤廃は、多くのパートタイム労働者にとって、将来の年金受給額が増加するという大きなメリットがあります。しかし、企業側の負担増が懸念されるため、政府と経済界の間で慎重な議論と調整が必要となります。 厚労省の試算によると、「106万円の壁」撤廃により、約400万人のパートタイム労働者が新たに厚生年金に加入すると見込まれています。これは、多くの国民にとって将来の生活設計に大きな影響を与える重要な政策変更です。今後、政府は企業側の負担軽減策を検討しつつ、制度改革を進めていく方針です。 食と農の専門家、山田一郎氏(仮名)は、「壁撤廃は社会保障の充実につながる重要な一歩だが、企業への影響を最小限に抑えるための配慮も必要だ」と指摘しています。

政府、経済界、そして国民が一体となって、持続可能な社会保障制度の構築に向けて取り組むことが求められています。