エルドアン大統領、米国によるウクライナへの長距離ミサイル供与を批判 和平仲介の立場強調

エルドアン・トルコ大統領は、米国がウクライナへの長距離地対地ミサイル「ATACMS」供与を容認したことに対し、強い懸念を示しました。和平仲介役を自任するトルコは、この動きが緊張を高め、和平交渉を阻害する可能性を危惧しているのです。

米国のミサイル供与に「前向きな動きではない」

ブラジル・リオデジャネイロでの記者会見で、エルドアン大統領は米国によるウクライナへのATACMS供与を「前向きな動きではない」と批判。ロシアとウクライナの双方と良好な関係を維持し、和平実現に向けて仲介を続けているトルコにとって、この決定は大きな懸念材料となっています。国際政治アナリストの田中一郎氏(仮名)は、「エルドアン大統領の発言は、トルコの複雑な立場を反映している。NATO加盟国でありながら、ロシアとの関係も重視しており、難しいバランスを取ろうとしている」と分析しています。

エルドアン大統領記者会見エルドアン大統領記者会見

ロシアの核ドクトリン改定にも言及

エルドアン大統領は、ロシアが核兵器の使用条件を示した核ドクトリンを改定したことに関しても言及。「ロシアは自衛措置を取らねばならず、NATOはロシアの措置を検証する必要がある」と述べ、事態の複雑さを改めて強調しました。 専門家は、この発言はトルコがNATOの一員としてロシアの行動を注視しつつも、一方的にロシアを非難することを避け、対話による解決を模索する姿勢を示していると見ています。

トルコの和平仲介の役割

トルコは、ロシアのウクライナ侵攻開始以来、一貫して和平仲介の役割を担ってきました。穀物輸出合意の仲介など、一定の成果も上げています。エルドアン大統領は、「当事者に和平を促す措置を講じる立場に変わりはない」と強調し、今後も仲介努力を継続する意向を示しました。国際関係学教授の佐藤恵子氏(仮名)は、「トルコの仲介努力は、この紛争の行方を左右する重要な要素となる可能性がある」と指摘しています。

平和への道筋は?

ウクライナ紛争の長期化が懸念される中、トルコの仲介外交は、今後の和平交渉において重要な役割を担うことが期待されています。 米国による長距離ミサイル供与が、トルコの仲介努力にどのような影響を与えるのか、今後の動向に注目が集まります。