ドイツ西部の都市ボンにある女性博物館で先日、慰安婦像の除幕式が行われ、同像が恒久的に設置されることになりました。この像は、以前は近隣のケルン市で期間限定で公開されていましたが、女性博物館への移設が決定しました。在ベルリン日本大使館によれば、ドイツ国内には合計5体の慰安婦像が存在しており、日本政府はこれらの撤去を継続的に求めていますが、地元の政治状況なども影響し、対応は難航しています。
ボン女性博物館での展示内容
新たに恒久設置された慰安婦像は、女性博物館の入り口前の庭に碑文と共に展示されています。碑文には、第二次世界大戦中にアジアやヨーロッパで多くの女性が性暴力の犠牲になった事実が記されており、特に「日本軍が大勢の女性や少女を誘拐し、性奴隷になるよう強いた」という記述が含まれています。除幕式には約50名の関係者が出席しました。
ドイツ・ボン女性博物館の庭に恒久設置された慰安婦像と碑文の写真
博物館長の考えと日本への言及
女性博物館は民間の運営施設です。マリアンネ・ピッツェン館長は、慰安婦は第二次世界大戦中の性奴隷であり戦争犯罪であると述べ、展示の正当性を主張しました。同館長は、「被害者の声がこれを裏付けている。この像は過去の記憶が風化しないための場所となる」と述べています。さらに、日本に対しては、「歴史を認めず、議論を封じようとする硬直した姿勢が国際的な注目を集め、かえって問題を複雑化させているのではないか」と批判的な見解を示しました。
これまでの設置経緯とドイツ国内の他事例
ピッツェン館長によると、女性博物館は2018年頃にも慰安婦像の設置を試みましたが、当時は市の借用地であったため実現しませんでした。当時のボン市長が保守系政党であるキリスト教民主同盟(CDU)出身で、設置に反対していたことが背景にあります。今回のボンへの移設により、ドイツ国内に存在する5体の慰安婦像のうち、公有地に設置されているのはベルリン市ミッテ区のものだけとなりました。例えば、中部カッセルでは、州立大学にあった像が2023年に撤去され、近隣の教会に移されています。
ベルリンの慰安婦像をめぐる動き
ベルリンの慰安婦像に関しては、昨年5月に当時の上川陽子外相がCDU所属のウェグナー市長と会談した際、市長が「一方的な展示は好ましくない」との立場を示し、地元自治体が撤去に向けた動きを見せました。しかし、像を設置した韓国系市民団体「コリア協議会」は、像の恒久展示を目指し、法廷闘争を継続する構えを見せています。
専門家が指摘する背景と課題
ヨーロッパにおける慰安婦像の設置はドイツに集中しており、イタリアにも例がありますが少数です。日韓関係史に詳しいボン大学のラインハルト・ツェルナー教授は、ドイツでは第二次世界大戦中の女性への暴力に関する公的な議論が不足しており、歴史と向き合うための記念碑が必要とされていると分析します。しかし、同教授は、慰安婦像は日韓間の問題に焦点を当てすぎているため、より普遍的な歴史認識のシンボルとしては適切ではないとの見解を示しています。
このように、ドイツ・ボン市の女性博物館に慰安婦像が恒久設置されたことは、ドイツ国内における慰安婦像をめぐる議論の新たな焦点となっています。日本政府は一貫して撤去を求めている一方、設置側は歴史認識の重要性を訴え、ベルリンのように法廷闘争の構えを見せる団体もあります。これらの動きは、過去の歴史認識問題が国際社会において依然として複雑な課題であることを示唆しています。