兵庫県知事選で、パワハラ疑惑で失職した斎藤元彦氏が再選を果たしました。当初は不利とされていた斎藤氏の逆転勝利の裏には、SNS戦略と、それと表裏一体となったデマや誹謗中傷の拡散がありました。jp24h.comでは、この選挙の光と影に迫ります。
SNSを駆使した選挙戦略
斎藤陣営は、SNSやYouTubeなどのネットメディアを駆使し、支持を広げました。従来型のメディアよりも、ターゲット層へのダイレクトな情報発信が可能なSNSは、若年層を中心に大きな影響力を持つようになりました。斎藤氏は自身の主張を積極的に発信し、有権者との直接的なコミュニケーションを図ることで、当初不利とされていた情勢を覆しました。
兵庫県知事 斎藤元彦氏
この戦略は、既存メディアの報道に不信感を抱く層に特に効果を発揮しました。ITジャーナリストの井上トシユキ氏は、「ネット黎明期に『真実はネットにこそある』という風潮がありましたが、近年、既存メディアへの不信感の高まりとともに、この傾向が再び強まっている」と分析しています。
デマと誹謗中傷の蔓延
一方で、SNS上ではデマや誹謗中傷が拡散しました。対立候補である稲村和美・前尼崎市長に対しては、外国人参政権推進派という事実無根の情報や、悪質な誹謗中傷が浴びせられました。
稲村陣営の選対関係者は、「デマや暴言がひどく、中にはウンチの写真を添付して『これでも食ってろ』といった投稿もあった」と証言しています。このような行為は、民主主義の根幹を揺るがす重大な問題です。
“反斎藤派”への攻撃
SNS上での誹謗中傷は、候補者だけでなく、斎藤氏に批判的な人物にも向けられました。“反斎藤派”と名指しされた竹内英明県議は、ネット上での言葉の暴力により家族が苦しむ事態となり、辞職に追い込まれました。
斎藤元彦氏
竹内氏は、「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏からも、SNS上で自宅への突撃予告を受けていました。これらの行為は、表現の自由の範囲を超えた、明確なハラスメントです。
陰謀論との類似性
陰謀論ウォッチャーの山崎リュウキチ氏は、斎藤氏支持者の動向に、陰謀論が生まれる構図との類似性を見出しています。「“希代の悪人”とされた人物が、“実は善人だった”というストーリーに人は強く惹かれる。斎藤氏がこのストーリーに当てはまる部分があった」と指摘しています。
今後の課題
今回の選挙は、SNSの持つ可能性と危険性を改めて浮き彫りにしました。情報発信の新たなツールとして有効な一方で、デマや誹謗中傷の温床となる危険性も孕んでいます。
今後の選挙においては、候補者だけでなく、有権者一人ひとりが情報リテラシーを高め、真偽を見極める力が求められます。また、プラットフォーム事業者による適切な対策も不可欠です。
兵庫県知事選の結果は、日本の政治におけるSNSの影響力の高まりを示す象徴的な出来事となりました。今後の政治のあり方を考える上で、重要な示唆を与えています。