日本人の海外旅行離れは幻想?メルボルン鉄道旅は物価高でも格安の真実

日本からの海外旅行が低迷している現状は、日本航空の鳥取三津子社長が2025年3月の記者会見で「日本としてよろしくない」と懸念を示すほどだ。現在の日系航空会社の国際線はインバウンド需要に重きを置いた運航が多く、日本人の海外旅行需要は残念ながら二の次と感じられる状況にある。社長の懸念は、単に会社の収益だけでなく、日本の将来を見据えた上での発言であろう。日本人の海外離れには、賃金停滞と国内物価高からの経済状況、海外の物価高、円安、困難な休暇取得、将来への不安など多くの要因があるが、海外旅行に対する心理的な萎縮も影響していると感じる。「海外は物価高だから旅行できない」というニュースが誇張されて報道され、「ならば海外へは行かなくてよい」という風潮を生んでいる側面はないだろうか。しかし、実際のところ、「鉄道の旅」は物価高と言われるオーストラリアでも日本より格安に楽しむ方法が存在したのだ。

物価高報道の裏側:オーストラリア鉄道の意外なコストパフォーマンス

「海外は物価高」というニュースは、しばしば割引切符やお得なパスなどを無視し、高い側面だけを切り取って報じられている可能性がある。筆者が経験したオーストラリアでの鉄道旅は、そうした報道とは異なる実態を示していた。特にメルボルンでの鉄道旅は、一般に言われる物価高の中にあっても、交通費を驚くほど抑えることが可能だった。これは、賢く旅をしたい観光客にとって見逃せない事実である。

シドニーとは全く違う!メルボルン独特の鉄道システム

オーストラリアは広大であり、州が変わると鉄道の雰囲気も大きく異なる。以前紹介したシドニーはニューサウスウェールズ州の都市だが、今回焦点を当てるメルボルンはビクトリア州の州都であり、運行している車両やシステムが全く異なっている。州が異なると別の国の鉄道に乗っているといっても過言ではないほどだ。メルボルン地域には近郊電車としてメトロ網があり、市内交通としてはトラムが発達している。メトロの終点から先や、地方都市へは、Vラインと呼ばれるビクトリア州営鉄道のディーゼルカーが運行している。Vはビクトリア(Victoria)州の頭文字であり、州内の広範なエリアを結んでいる。シドニーエリアの鉄道車両には2階建てが多かったのに対し、メルボルンエリアには2階建て車両はなく、車両形態も多様である。

Vライン、メトロ、そして無料トイレ:メルボルン鉄道利用のヒント

メルボルンのサザンクロス駅は、Vラインやメトロの主要なターミナル駅の一つだ。Vラインの車両には、ドイツ製のディーゼルカー「ロードシティ」などが使用されている。利用者が快適に過ごせるよう、オーストラリアの鉄道駅には無料のトイレが完備されている場所が多いのも特徴だ。これは日本の駅と比較しても利便性が高いと感じられる点だろう。こうした細かな配慮も、旅の快適さを高める要素となる。

メルボルンのサザンクロス駅に停車中のVラインのドイツ製ディーゼルカーメルボルンのサザンクロス駅に停車中のVラインのドイツ製ディーゼルカー

広大なオーストラリア、州を跨ぐ移動は?

オーストラリアにおいて、州をまたぐ長距離列車の本数は少ないのが現状だ。例えば、メルボルンからシドニーへの列車は1日に昼行・夜行が各1本、南オーストラリア州のアデレードへの列車は週2便程度となっている。このため、異なる州間の移動は、時間や利便性を考慮すると空路を選択するのが一般的である。しかし、これは州内の鉄道網が発達していないということではなく、むしろ州内で完結する移動においては鉄道が重要な役割を果たしていることを示している。

まとめ:視点を変えれば海外旅行はもっと身近に

日本人の「海外離れ」は、経済的な要因に加え、メディアの報道によって強化された「海外=物価高」というイメージに影響されている部分も大きいだろう。しかし、今回メルボルンの鉄道旅を例に見たように、視点を変えたり情報を収集したりすれば、物価高と言われる国でも格安で楽しめる方法は存在する。メディアの報道だけを鵜呑みにせず、多様な情報に触れ、自分にとって最適な旅のスタイルを見つけることで、海外旅行へのハードルが下がり、再び多くの日本人が海外へ目を向けるようになることが期待される。オーストラリアの鉄道は州によって全く異なる顔を持ち、賢く旅をしたい人にとって魅力的な選択肢となり得るだろう。

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