北朝鮮の奥深く、山々に囲まれた慈江道満浦市。軍需産業の中心地として知られ、謎に包まれたこの街の日常を、対岸の中国吉林省集安市から撮影した写真を通して垣間見てみましょう。厳しい統制下にある人々の暮らし、そしてエネルギー不足を象徴する木炭車など、貴重な写真とともにレポートします。
慈江道満浦市:山間部に広がる集落と人々の営み
北朝鮮の検問所前で停車する木炭車
深い谷の裾野に広がる集落では、山腹を切り開いた畑で農作業が行われています。有刺鉄線が張られた白い支柱は、この地域への出入りが厳しく制限されていることを物語っています。
北朝鮮の慈江道満浦市の集落と畑
食料自給を目指す北朝鮮において、農業は重要な産業です。牛は貴重な労働力であり、農場の共有財産として大切に扱われています。収穫された唐辛子と思われる作物は、牛車に載せられて運ばれています。
北朝鮮の農場で収穫物を運ぶ牛車
主食であるトウモロコシは、乾燥させて保存し、様々な料理に利用されます。屋根の上で天日干しされる光景は、北朝鮮の農村部でよく見られる風景です。リヤカーで遊ぶ子どもたちの姿からは、厳しい生活の中でもたくましく生きる様子が伺えます。
北朝鮮の家の屋根でトウモロコシを乾燥させる様子と遊ぶ子供たち
厳しい統制とエネルギー不足:木炭車と検問所
自転車の前かごには「満浦」と書かれた居住地を示す登録証が取り付けられています。これは北朝鮮における移動の制限を象徴するものです。
北朝鮮の女性が乗る自転車と満浦の登録証
昼食を終えて作業に戻る農場員たちの姿。藁を抱えている様子から、家畜の飼料確保にも余念がないことが分かります。
北朝鮮の農場員が昼食を終えて作業に戻る様子
北朝鮮では、親の職業が子どもの将来を決定づけることが多く、農場員の子どもは農場員になることが一般的です。大人の服を着た子どもが母親の後を追う姿は、親子で支え合う様子を映し出しています。
北朝鮮の親子:農場員
「検閲員」の腕章をつけた軍人が検問所で車両を検査する様子からは、厳しい統制の実態が見て取れます。
北朝鮮の検問所での検閲の様子
エネルギー不足が深刻な北朝鮮では、輸入車を改造した木炭車が利用されています。冒頭の写真にあるように、検問所の前で停車している木炭車からは白い煙が上がっています。これは、この国のエネルギー事情を象徴する一つの光景と言えるでしょう。専門家の中には、北朝鮮のエネルギー事情の悪化は、国際的な制裁の影響が大きいと指摘する声もあります。
生活の知恵と工場:日々の暮らしと産業
住宅の扉は鉄製で、施錠部分が隠されているなど、防犯対策が施されています。壁に残された子どもの手形からは、厳しい環境の中でも、子どもたちが成長していく様子が垣間見えます。
北朝鮮の住宅の壁に残された子供の手形
老朽化が目立つ工場は、石灰石工場もしくはセメント工場と推測されます。稼働している様子からは、産業活動を維持しようとする努力が感じられます。
北朝鮮の稼働中の工場
これらの写真は、北朝鮮の慈江道満浦市における人々の生活の一端を捉えたものです。国際社会から孤立したこの地域で、人々は限られた資源の中で、たくましく生活を営んでいます。