頼清徳総統、就任半年で台湾の民意を掴む:中国への明確な姿勢と巧みな戦略

台湾の頼清徳総統は、2024年11月20日に就任半年を迎えました。就任以来、中国への明確な姿勢と巧みな政治戦略で、台湾の民意を掴みつつある現状に迫ります。

蔡英文前総統との違い:現状維持路線を継承しつつ中国に毅然とした態度

頼清徳総統は、蔡英文前総統の現状維持路線を継承しつつも、中国に対してより毅然とした態度を示しています。「台湾独立」論を封印し、中台関係の安定を重視する姿勢を見せる一方で、中国の「一つの中国」原則を明確に否定し、統一には断固反対する立場を表明しています。

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就任演説では、「中華民国(台湾)と中華人民共和国(中国)は互いに隷属していない」と力強く宣言。その後も、「中華人民共和国は中華民国の人々の祖国にはなり得ない」「中華人民共和国に台湾を代表する権利はない」など、中国の主張に真っ向から反論する発言を繰り返しています。これは、中国への刺激を避けてきた蔡前総統とは一線を画す姿勢と言えるでしょう。

台湾師範大学の范世平教授は、「頼総統の発言は国際的な注目を集めつつ、台湾の主流民意の支持も得ている。米国も、頼総統が中国を刺激しているとは認識していない」と分析しています。

“中華民国”を巧みに利用:国民党支持層へのアプローチ

頼総統の戦略は、単なる強硬姿勢ではありません。最大野党である中国国民党は、頼総統の発言を「中国への刺激」と批判していますが、実際には綿密な計算に基づいた巧みな戦略が見て取れます。

例えば、「中華民国」という概念を前面に押し出すことで、国民党支持層や「台湾独立」に否定的な中間層を取り込もうとしているのです。これは、少数与党として厳しい政権運営を強いられている頼政権にとって、重要な支持基盤の拡大につながると期待されています。

民意の支持:7割超が頼総統の主張に賛同

頼総統の戦略は、民意の支持にもつながっています。台湾民意基金会が2024年10月に実施した世論調査によると、「中華人民共和国に台湾を代表する権利はない」という頼総統の主張に7割超が賛同。頼政権の支持率も48.6%と、不支持率37.7%を上回っています。注目すべきは、国民党支持層からも25%が頼政権を評価している点です。「中華民国」を強調する戦略が、一定の効果を上げていると言えるでしょう。

今後の課題:米中関係と台湾の安全保障

頼清徳総統の就任半年は、中国への明確な姿勢と巧みな戦略によって、一定の成果を上げています。しかし、米中関係の緊張や中国による軍事圧力の高まりなど、台湾を取り巻く安全保障環境は依然として厳しい状況にあります。今後の政権運営においては、これらの課題にどのように対応していくかが問われることになるでしょう。