食用コオロギの生産・商品開発を手がける徳島市の「グリラス」が自己破産を申請しました。環境に配慮した次世代フードとして期待されていたコオロギ食。その未来に何が起きたのでしょうか?本記事では、グリラスの破産から、食用コオロギを取り巻く現状、そして食糧問題への課題まで深く掘り下げていきます。
食用コオロギベンチャー「グリラス」の破産
徳島大学発のベンチャー企業として注目を集めていたグリラス。世界的な食糧危機を見据え、食用コオロギの生産・販売に力を注いでいました。しかし、2024年11月22日、徳島地裁に自己破産を申請。その背景には、コオロギ食に対する社会の反応や、事業展開の難しさがあったと考えられます。
グリラス元農水大臣
コオロギ食への抵抗感:消費者の理解は得られたか?
2022年、徳島県立小松島西高校でコオロギ粉末入りコロッケが給食に提供されたことが大きな話題となりました。その後もコオロギエキスを使った大学いもが提供されるなど、学校給食への導入が試みられましたが、保護者や世間からは「虫を食べるなんて…」といった抵抗感が根強く、議論が巻き起こりました。
グリラスは、集英社オンラインの取材に対し、コオロギ食への理解を広めたいという思いから学校給食への提供を行ったと説明。同時に、未知の食材への抵抗感は当然のことだと理解を示していました。
食糧危機と昆虫食:本当に救世主となるのか?
世界人口増加に伴い、食糧危機への懸念が高まる中、昆虫食は家畜に代わるタンパク源として注目されています。グリラスも、食糧問題への取り組みの一環としてコオロギ食を推進していました。
なぜコオロギなのか?
数ある昆虫の中で、グリラスがコオロギを選んだ理由には、高タンパク質、低コストでの飼育、雑食性といった特徴があります。家畜と比べて飼育に必要な餌や水も少なく、環境負荷が低いとされています。
しかし、現状では飼育コストが高く、価格競争力という面では課題が残ります。グリラスは、小麦粉ふすまや食品残渣を餌に用いるなど、コスト削減への努力を続けていましたが、事業の継続は困難となりました。
コオロギを使った料理
食の未来への課題:持続可能性と消費者の理解
グリラスの破産は、昆虫食ビジネスの難しさを改めて浮き彫りにしました。食糧危機への対策として期待される昆虫食ですが、消費者の理解を得ること、安定供給を実現すること、そして価格競争力を高めることなど、多くの課題を克服していく必要があります。
食の未来を考える上で、持続可能性と消費者のニーズのバランスをどう取っていくのか、今後も議論が続いていくでしょう。