日本の医療現場は、世界有数の長寿国として知られる一方で、医師不足と過酷な労働環境という深刻な問題を抱えています。この記事では、外科医から美容医師に転身した小山大河さん(仮名)のケースを通して、若手医師が自由診療を選択する背景にある現状を掘り下げていきます。
奨学金と医局制度:医師のキャリアを縛る現実
小山さんは国立大学医学部出身。高校時代、成績優秀だったことから医学部進学を勧められ、半ば成り行きで医学の道へ進みました。学部時代に見学した手術に魅力を感じ、外科医を志します。国家試験にも合格し、順風満帆なキャリアをスタートさせました。
外科専門医の認定証を持つ小山さん
しかし、専門医を目指す後期研修が始まると状況は一変します。医局制度により、小山さんは県庁所在地の総合病院に配属されました。そこでの労働環境は過酷を極め、月200時間超の残業は当たり前。深夜の緊急手術や泊まり込みでの術後観察も頻繁に行っていました。
小山さんは学部時代に奨学金を借りており、県内で一定年数働かなければ高金利での返済が求められます。経済的な制約も、小山さんを苦しめる一因となっていました。
過酷な労働環境と患者の心無い言葉:やりがいを失った外科医人生
インタビューに答える小山さん
過酷な労働環境に加え、患者の家族から心無い言葉を浴びせられることもありました。「手術のせいで寝たきりになった」といった accusations は、小山さんの心を深く傷つけ、医師としてのやりがいを失わせていきました。
その後、別の病院に異動したものの、医師不足の地方病院では「待機」という名の当番があり、常に呼び出しのプレッシャーに晒される日々が続きました。シャワーを浴びている時にも呼び出しの幻聴が聞こえるほど、精神的に追い詰められていったといいます。
美容医療への転身:自由診療という選択肢
外科医から美容医師に転身した小山さん
心身ともに限界を感じた小山さんは、最終的に美容整形外科への転身を決意しました。美容医療は自由診療であり、保険診療と比較して労働時間や収入を自分でコントロールしやすいというメリットがあります。
医療ジャーナリストの山田花子さん(仮名)は、「医師不足と過酷な労働環境が、若手医師を自由診療へと流出させる大きな要因となっている」と指摘します。保険診療の現場では、残された医師の負担がさらに増し、悪循環に陥っているのです。
小山さんのようなケースは氷山の一角に過ぎません。日本の医療の未来を守るためには、医師の労働環境改善と待遇の見直し、そして医局制度の見直しなど、抜本的な改革が必要と言えるでしょう。