中学入試「英語入試」激変の波 豊島岡女子学園の導入と帰国生入試規制強化の影響

2025年首都圏中学入試の特徴として、先に「難関疲れ」を指摘しました。これに加えて、近年の中学入試では「英語」の能力を問う傾向が着実に進んでいます。特に2024年入試での規制強化は、「帰国生入試」や「国際生入試」のあり方に大きな変化をもたらしました。本稿では、この「英語入試」の現状と影響について掘り下げます。

中学入試における英語の存在感向上

2025年入試は、私があえて「英語入試元年」と呼んだ年です。これは、最難関校の一つである豊島岡女子学園が、英語資格を利用した算数1科の筆記試験を導入したためです。約1年前に、難関・上位校で中国籍の合格者が増加しているという指摘をしました。日本語に必ずしも長けていない受験生が一般入試で最難関校に挑戦できる可能性、そして難関校入試は4科目であるという従来の常識に揺らぎが見えた点は、教育界における大きな転換点と捉えられます。

豊島岡女子学園「算数・英語資格入試」の詳細と結果

豊島岡女子学園は、これまで3回の入試を4科目で行ってきましたが、2025年入試では4科目入試との併願が可能な「算数・英語資格入試」を新たに導入しました。この入試では、当日の筆記試験である算数が200点満点(4科目入試では100点満点と同じ問題を使用)で、これに取得済みの英語資格に応じた点数が最高100点加算され、合計300点満点で合否が判定されます。なお、豊島岡女子学園は別途の帰国生入試は行っていませんが、4科目入試において「海外在留証明書」を提出した帰国生に対して総得点に5点加点する措置を講じています。

英語資格は、実用英語技能検定(英検)の取得級に基づいて点数化されました。3級が50点、準2級が英検CSEスコアにより70点または80点、2級が90点、そして準1級と1級は100点と換算されています。この換算点については、2026年入試で見直しの可能性が示唆されています。英検では、準2級と2級の間に「準2級プラス」が新設されたことも影響するかもしれません。

募集定員はいずれの回も若干名でした。実際には、3回の合計で出願者数286人に対し、受験者数は192人でした。合格者数は32人で、実質倍率は約6倍と、非常に高い競争率でした。受験生の7割強は4科目入試と併願していました。算数・英語資格入試のみに出願して合格した受験生は5人でした。

得点データも公表されています。3回の入試における受験生全体の平均得点率は、算数が54~57%でした(4科目受験者の平均は55~60%)。出願者の半数以上が英検2級以上を取得しており、英語の受験生平均点は74~78点でした。合格には算数と英語の合計で70%以上の得点が必要だったと見られます(合格者平均は61~70%)。これは非常に厳しい戦いだったことを示唆しています。しかし、英検3級取得者からも合格者が出ています。英検3級以上を取得済みで、かつ算数が得意であれば、4科目入試との併願により合格の可能性がわずかに高まるかもしれません。

帰国生・国際生入試の現状と課題

一方、かつては「帰国子女」入試と呼ばれた帰国生入試も、この3年間で大きな変化を遂げています。特に2024年入試で実施された規制強化は、その制度と受験者数に激しい変化をもたらしました。

規制強化の影響を受け、帰国生入試の受験者数が減少した芝国際中学校・高等学校(東京都港区)の校舎写真規制強化の影響を受け、帰国生入試の受験者数が減少した芝国際中学校・高等学校(東京都港区)の校舎写真

この規制強化が、一部の学校、例えば芝国際のように、帰国生入試の受験者数に大きな影響を与えた事例も報告されています。帰国生入試および国際生入試における具体的な変化や影響については、今後の記事でさらに詳しく掘り下げていく予定です。

今後の展望

今後の一般入試における「英語」の扱われ方についても、次回以降の連載で振り返ります。また、帰国生の2026年入試での変更点や展望についても、現時点で判明している範囲で触れていきます。最新の動向については、ダイヤモンド社教育情報のX(旧Twitter)やFacebookでも随時取り上げていくので、そちらもご参照ください。中学入試における英語の役割は、今後も注目すべき重要な要素であり続けるでしょう。