韓国は、サムスン電子とSKハイニックスという世界的なメモリー半導体メーカーを擁し、長年「半導体強国」として君臨してきました。しかし、その輝かしい実績の裏には、脆弱な生態系という大きな課題が潜んでいます。本記事では、韓国半導体産業が抱える問題点と、その解決に向けた取り組みについて深く掘り下げていきます。
メモリー半導体への偏重:輸出額の変動リスク
韓国の半導体輸出は好調を維持していますが、その大半はメモリー半導体によるものです。この偏重は、市場の需要変動に大きく左右されるリスクを抱えています。数年前のメモリー半導体需要減少による生産量減の経験は、その脆弱性を如実に示しています。
メモリー半導体
システム半導体の苦戦:世界シェア3%の壁
メモリー偏重の課題を克服するため、韓国政府と産業界はシステム半導体の強化に力を入れてきました。しかし、その世界シェアは依然として3%程度にとどまっており、大きな成果を上げていません。さらに、台湾や中国の追い上げにより、メモリー半導体市場での競争も激化しています。「韓国半導体の製造生産能力、製造競争力が落ちている」(対外経済政策研究院 チョン・ヒョンゴン研究委員)という指摘も出ており、危機感が高まっています。
貧弱な生態系:素材・部品・装備への海外依存
専門家は、韓国半導体産業の競争力鈍化の要因として、脆弱な生態系を挙げます。「サムスン電子、SKハイニックス以外に、独自の技術を持つ企業が少ない」(極東大 チェ・ジェソン教授)という現状は、素材・部品・装備の多くを海外に依存していることに起因しています。フォト、測定、イオン注入などの半導体製造装置は、長年にわたり貿易赤字を計上しています。また、スーパーキャパシタや亜酸化窒素などの素材も、輸入依存度が非常に高い状況です。「サムスン電子、SKハイニックスの支援がなければ、自立できる素材・部品・装備企業はほとんどない」(業界関係者)という声も聞かれます。
半導体製造装置
パッケージング・デザインハウス市場での遅れ
AI半導体や高性能コンピューティングの重要性が高まる中、パッケージングやデザインハウス市場でも韓国企業の存在感は薄れています。これらの市場は台湾企業がリードしており、韓国は後れを取っています。パッケージング市場シェアは減少傾向にあり、「先端パッケージングは台湾・米国に劣勢で、汎用パッケージングはマレーシア・中国に追い上げられている」(業界関係者)という厳しい評価を受けています。
今後の展望:生態系強化への取り組み
韓国半導体産業が持続的な成長を遂げるためには、メモリー偏重の解消、システム半導体の強化、そして何よりも生態系の構築が不可欠です。素材・部品・装備の国内生産体制の強化、人材育成、研究開発への投資など、多角的な取り組みが求められています。
韓国の半導体産業は、大きな転換期を迎えています。輝かしい実績に安住することなく、課題解決に向けた不断の努力が、未来の競争力を左右する鍵となるでしょう。