教員不足が叫ばれる現代。その深刻さは、現場の教員が足りないというだけでなく、新しく教員になろうとする若者が減っている現状にも表れています。本記事では、教員採用試験の倍率低下の実態を分析し、学生の希望と教育現場の労働環境のギャップについて、元小学校教員の視点も交えながら考察します。
教員採用試験、かつての人気はどこへ?倍率低下の衝撃
近年、教員採用試験の倍率が低下しているというニュースを耳にする機会が増えました。東京都教育委員会の発表によると、令和6年度の小学校教員採用試験の倍率はわずか1.2倍。これは東京都に限った話ではなく、北海道1.5倍、秋田県1.1倍、新潟県1.3倍、千葉県1.1倍、横浜市1.6倍、鹿児島県1.2倍など、多くの自治体で1倍台という低倍率となっています。合格後に辞退し、民間企業を選ぶ学生もいることを考えると、実際に採用予定数を満たせない自治体も出てくる可能性が高いでしょう。
東京都の小学校教員採用試験の倍率推移10年以上前、私が教員採用試験を受けた頃は、首都圏で5倍以上、地方では10倍以上が当たり前でした。「人気の職業」と呼ばれていた教員。なぜここまで志望者が減少してしまったのでしょうか?
教育実習とSNSの口コミ、若者を遠ざける「現実」
学生が教職を志望する理由は様々でしょう。恩師への憧れ、勉強が好き、教えることが好き、子どもの成長を支えたい…希望に胸を膨らませ、大学で努力を重ね、教員免許を取得します。しかし、教育実習で直面するのは、想像をはるかに超える現実です。授業準備、児童指導、保護者対応、膨大な事務処理や会議…多忙を極める教育現場の重圧を、身をもって体験することになります。
教育ジャーナリストの山田一郎氏(仮名)は、「教育実習は学生にとって、教職の理想と現実のギャップを痛感する場となっている」と指摘します。 理想と現実の乖離は、若者の教職への熱意を削ぎ落としてしまう大きな要因と言えるでしょう。
さらに、X(旧Twitter)などのSNSでは、現場教員の悲痛な叫びが溢れています。文部科学省が教職の魅力を発信しようと始めた「#教師のバトン」プロジェクトでさえ、厳しい労働環境を嘆く声であふれてしまったことは記憶に新しいです。
転職活動をする際、企業の評判や社員の口コミを調べますよね。ネットショッピングでも、商品のレビューを参考にしますよね。ネガティブな情報が多いと、応募や購入をためらってしまうのは当然のこと。教職も同じで、SNSで発信される現場のリアルな声が、学生の教職離れを加速させていると言えるでしょう。
未来の教育を守るために、必要な変化とは?
教員不足は、子どもたちの未来に関わる重要な課題です。教職の魅力を取り戻し、優秀な人材を確保するためには、教育現場の労働環境改善が急務です。長時間労働の解消、事務作業の効率化、教員の負担軽減など、具体的な対策が必要です。
また、教育実習のあり方を見直し、学生が教職のやりがいを実感できるようなプログラムを提供することも重要です。未来を担う子どもたちのために、より良い教育環境を築いていくためには、社会全体でこの問題に取り組んでいく必要があるでしょう。