【米造船業の衰退】韓国との連携強化で巻き返しなるか?

アメリカ造船業の衰退が深刻化し、海軍力低下への懸念が高まっている。中国の造船能力増強を背景に、トランプ次期大統領は韓国との連携強化を模索している。本稿では、米造船業衰退の現状と韓国との連携の行方について解説する。

米造船業衰退の現状

かつて世界最強を誇った米造船業は、近年深刻な衰退に直面している。その背景には、長年の競争力低下と生産能力の不足がある。

中国の台頭と米国の危機感

中国は近年、驚異的なペースで海軍力を増強しており、艦船数では既に米国を凌駕している。CSIS(戦略国際問題研究所)の報告書では、米国の海上支配力が揺らいでいると警鐘を鳴らしている。

港湾の風景港湾の風景

艦船数の優位性は、海戦における勝利に直結する。多数の艦船を保有することで、損失を迅速に補充し、敵への効果的な対応が可能となる。中国海軍の艦船数は増加の一途を辿る一方、米国海軍は減少傾向にあり、この差は長期的な紛争において致命的な危険となりうる。

生産能力の格差

米海軍情報局の資料によると、中国の造船能力は米国の232倍以上と推定されている。中国は規模と生産性の高い商業用造船所を多数保有しており、米国との差は拡大する一方だ。

米造船業衰退の歴史

米造船業の衰退は、皮肉にも自国の保護政策が原因の一つとなっている。

ジョーンズ法の功罪

1920年に制定されたジョーンズ法は、米国内の貨物輸送に使用する船舶の国内建造を義務付けた。当初は造船業の保護を目的としたが、結果として国際競争力を失わせる要因となった。海外の安価で高品質な船舶との競争から隔離されたことで、米国の造船業は技術革新やコスト削減の努力を怠り、競争力を失っていった。

造船所の減少と雇用への影響

ジョーンズ法の影響もあり、米国の造船所は次々と閉鎖に追い込まれ、雇用にも深刻な影響が出た。現在、大型商業船舶を建造できる造船所は米国にわずか4カ所しか残っていない。

韓国との連携強化

トランプ次期大統領は、韓国との連携強化を表明している。韓国は世界的な造船大国であり、米海軍の艦艇修理や造船所買収を通じて、米造船業の再建に貢献することが期待されている。

ハンファオーシャン巨済事業場に入港する米海軍補給艦ハンファオーシャン巨済事業場に入港する米海軍補給艦

修理と造船所買収

バーンズ=トリプソン修正法により、外国の造船所での米海軍艦艇の建造は禁止されている。しかし、修理に関しては例外が認められており、韓国の造船所が米海軍艦艇の修理を請け負うことが可能だ。また、韓国企業による米国の造船所買収も期待されている。

ハンファグループによる米フィリー造船所の買収ハンファグループによる米フィリー造船所の買収

韓米安保協力の強化

韓国との連携強化は、韓米安保協力の強化にも繋がる。韓国が米海軍艦艇の建造や整備に参画することで、両国の戦略的連携はより強固なものとなるだろう。

まとめ

米造船業の衰退は、国家安全保障上の重大な問題となっている。中国の造船能力増強を前に、韓国との連携強化は米海軍力回復の鍵となる可能性がある。今後の展開に注目が必要だ。