日本政府は、2025年版防衛白書を閣議で報告しました。今回、石破茂政権発足後初めての発刊となるこの白書では、日本の安全保障政策と周辺地域の情勢が詳細に記されています。特に注目されるのは、竹島(韓国名:独島)の領有権に関する主張が21年連続で記載された点です。また、未来を担う子どもたちへの防衛意識の醸成を目指し、防衛白書の子ども向けバージョンも作成され、全国の小学校へ配布が始まっています。これは、日本が自国の領土問題について一貫した姿勢を示し、次世代への教育にも力を入れていることを物語っています。
21年連続の竹島領有権主張と「子ども向け防衛白書」配布
日本は、2005年以降、防衛白書において竹島を「日本の固有の領土」と明記し続けており、今回の2025年版でその主張は21年目となりました。中谷元防衛相が石破首相出席の閣議に報告したこの白書には、「日本の固有の領土である北方(クリル四島を指す)及び竹島の領土問題が、いまだ未解決の状態で存在している」との説明が添えられています。
日本列島周辺の安全保障状況を描いた地図の中では、竹島を巡る領土問題が、台湾問題や中国の活発な海洋進出問題と並んで記載されており、その重要性が示されています。
小学校に配布された子ども向け防衛白書に示された竹島の領土
さらに、防衛省は今年、約6100冊の子ども向け防衛白書を全国の小学校に配布を開始しました。長崎県の民間放送局NBC長崎放送によると、この子ども向け白書にも「独島は我が国固有の領土」という主張が盛り込まれた地図が掲載されており、早い段階から子どもたちに日本の領土認識を伝える取り組みが進められています。
韓国については、オーストラリア、インド、欧州に続いて言及され、「国際社会におけるさまざまな課題への対応にパートナーとして協力すべき重要な隣国」と表現されました。これは、昨年の防衛白書で初めて採用された表現であり、日韓関係の改善を反映していると考えられます。
複雑化する国際情勢:中国・北朝鮮・ロシアへの懸念
今回の防衛白書では、国際社会が「戦後最大の試練の時を迎え、新たな危機の時代に突入しつつある」と指摘しています。特に、勢力を拡大する中国と、ウクライナに侵攻したロシアの動向が念頭に置かれています。
中国の海洋活動と台湾問題
日本周辺で中国の活動が増加していることに対し、「強く懸念」が示されました。南シナ海における中国の海洋進出や、尖閣諸島周辺での活動は、日本の安全保障にとって大きな懸念材料となっています。また、中谷防衛相は、共同通信の報道に対して「台湾海峡の平和と安定は、我が国の安全保障はもとより、国際社会の安定にとっても重要である」という一貫した立場を強調し、台湾有事の際の日本の役割に関する具体的なコメントは避けました。
北朝鮮の核・ミサイル開発と露朝接近
北朝鮮については、「プルトニウムに加え、高濃縮ウランを用いた核兵器開発を推進していくとみられる」として、引き続き強い警戒感を示しています。さらに、北朝鮮とロシアの接近状況についても懸念を表明。ウクライナ戦争に関連し、「北朝鮮がウクライナ侵略にどのように関与し、ロシアからいかなる協力を得るのかをしっかりと注視していく必要がある」と指摘し、両国の軍事協力の進展に注視する姿勢を明確にしました。
日米防衛協力と自衛隊の統合作戦司令部
今回の防衛白書では、今年3月に設立された自衛隊の統合作戦司令部(JJOC)についても、図を交えて詳しく説明されています。白書は、「統合作戦司令官は、自衛隊の運用に関し、大臣の命令を受け、平素から部隊を一元的に指揮する」と明記し、有事における自衛隊の指揮系統の一元化と実効性向上を目指す姿勢を示しています。
また、在日米軍がインド太平洋軍司令官隷下の統合軍司令部として再構成されることとなったことも補足されました。中谷防衛相は序文で、「ヘグセス米国防長官との間で防衛相会談を重ね、日米それぞれの指揮・統制枠組みの向上の一環として、自衛隊の統合作戦司令部(JJOC)の設立と歩調を合わせる形で在日米軍の統合軍司令部へのアップグレードが開始された」と述べ、日米同盟の抑止力と対処力の強化に向けた連携が進んでいることを強調しました。
結論
2025年版防衛白書は、日本の安全保障を取り巻く厳しい現実と、それに対応するための具体的な取り組みを浮き彫りにしています。竹島問題における一貫した領有権主張から、子どもたちへの防衛意識の普及、そして複雑化する国際情勢への懸念まで、多岐にわたる課題への日本の姿勢が示されました。特に、中国や北朝鮮、ロシアといった国々の動向を強く警戒しつつ、自衛隊の指揮・統制能力の強化と、米国との同盟関係の深化を通じて、日本の防衛態勢を一層強固にしようとする意思が読み取れます。国際社会が新たな危機に直面する中で、日本の防衛政策の動向は引き続き注目されるでしょう。
参照
- 共同通信
- NBC長崎放送
- 聯合ニュース
- Yahoo!ニュース (https://news.yahoo.co.jp/articles/e18ed3b60f786ab7e18fc5426e46bf74ddf4967a)