ダンス&ボーカルグループ・BE:FIRSTが6月3日、フランス・パリで初の単独ライブを開催した。日本での彼らのライブに何度も足を運んできた記者(NNNパリ支局 佐藤篤志)は、「海外の地でいかに彼らが受け入れられるのか」という問いを胸に、その歴史的な公演に潜入した。そこで目にしたのは、メンバーのMANATOが「過去イチ」と評するほどの熱狂に包まれた会場の光景だった。なぜフランスの観客はBE:FIRSTに魅了され、これほどの熱気を生み出したのか。そのワケに迫る。
BE:FIRSTのメンバー(左からSHUNTO、JUNON、SOTA、MANATO、RYUHEI、LEO)がパリ公演のステージで躍動する様子。RYOKIは体調不良のため出演見合わせ。
世界に問いかける「Who is BE:FIRST?」:パリの観客を惹きつけた幕開け
ステージの照明が落ちた瞬間、パリの老舗ライブハウス「バタクラン」の会場は、待ちわびた観客たちの「BE:FIRST! BE:FIRST!」という力強いコールと手拍子の地鳴りのような響きに包まれた。プロデューサーのSKY-HIが「世界を取りにいくグループを作る」という明確なビジョンを掲げて誕生したBE:FIRSTにとって、初のワールドツアー『Who is BE:FIRST?』は、まさに彼らが世界に「BE:FIRSTとは何者か?」を問いかける挑戦だ。フランスでは初となる単独公演にもかかわらず、その盛り上がりは尋常ではなかった。
幕開けの伴奏が響き始めると、会場の熱量はさらに爆発的なものとなる。1曲目に披露された「Mainstream」は、音数を極限まで少なくしたシンプルな構成が特徴で、その分、メンバーそれぞれの声質や卓越したダンススキルが際立つ。彼らの個性と高いパフォーマンス力が重なり合うことで、観客は一瞬にしてBE:FIRSTが描く唯一無二の世界観に引き込まれていった。楽曲の核となる「流行を追うのではなく、自らがメインストリームになる」という強い意思が発せられ、彼らの世界戦略がいよいよ本格的に始まったことを告げた。
MANATOも驚く「過去イチ」の熱狂:多様なファン層と“リアル”なパフォーマンス
BE:FIRSTのパリ公演で、観客とメンバーが一体となって熱狂するライブ会場の様子。観客は笑顔でパフォーマンスに夢中になっている。
会場となったバタクランは、フランス国内の一線級アーティストはもちろん、数々の海外有名アーティストも公演を行ってきた歴史あるライブハウスだ。この日、会場には10代から60代まで、幅広い世代のBE:FIRSTファンが詰めかけていた。日本人アーティストの海外公演では日本人ファンの存在が目立つことが多いが、今回のパリ公演ではフランス人観客が圧倒的に多く、チケットは完売という人気ぶり。メンバーがMCで客席に問いかけると、大半が「初めてBE:FIRSTのライブに来た」と答える新規ファン層であることが明らかになった。しかし、日本語の歌詞を完璧に歌い上げるフランス人も多数おり、彼らが一時的なブームではなく、本物のファン層を形成していることが肌で感じられた。
1時間半に及ぶショーでは、今年リリースされた最新曲「Spacecraft」や「Sailing」をはじめ、「Boom Boom Back」「Bye-Good-Bye」「Shining One」といった日本でもおなじみのヒット曲が次々と披露された。特筆すべきは、ダンスパフォーマンスと並行して、バックトラックをほとんど使用しない「生歌」でのパフォーマンスを貫いた点だ。彼らの息づかいや声のわずかな揺れまでが会場にダイレクトに伝わり、BE:FIRSTの圧倒的な実力を浮き彫りにした。フランスのファンも、その“リアルさ”に熱狂し、体を動かさずにはいられないといった雰囲気で、中には一心不乱に踊り続ける観客の姿も見られた。
とりわけ、楽曲「Scream」では、ラストに向けて畳みかけるような歌とダンスの迫力に、観客は完全に圧倒された。曲が終わり、しばらくの間、メンバーがステージに立ち尽くし余韻を持たせるその静寂は、会場から沸き起こる大歓声によってかき消され、ボルテージは最高潮に達した。やがて観客の足踏みが始まり、フロア全体が地鳴りのような振動に包まれ、BE:FIRSTとフランスのファンの間に強烈な一体感が生まれた瞬間だった。
BE:FIRSTのパリ公演は、彼らが「Who is BE:FIRST?」という問いに対する明確な答えを、世界に向けて提示した成功例となった。この熱狂と一体感は、J-POPが国境を越えて愛される可能性を改めて示すものと言えるだろう。