医療・介護・福祉の現場で働く人々の年末一時金が大幅に減少している現状を受け、日本医療労働組合連合会(医労連)は深刻な懸念を表明しました。このままでは、生活苦による大量離職が現実のものとなり、医療体制の崩壊につながる可能性も示唆されています。
年末一時金、全産業平均の半分以下に
連合の調査によると、組合員の年末一時金の平均額は82万7478円。しかし、医労連の調査では、医療・介護従事者の年末一時金は前年比9万8884円減の42万8164円と、全産業平均の半分以下に留まる見込みです。200の加盟組合のうち、83組合が前年からの引き下げを回答し、中には26万円ものマイナス回答もあったとのこと。東京、北海道、長野で特に大幅な減少が見られます。
医療従事者の年末一時金減額に関する記者会見
大量離職の懸念、医療崩壊の危機も
医労連の米沢哲書記長は、一時金削減による生活苦から、医療従事者の大量離職が懸念されると指摘。北海道のある民間基幹病院では、17万円の引き下げにより、手術200件、救急車受け入れ450件、入院患者数延べ1万3000人(いずれもひと月)に対応できなくなると予測されています。これは、医療現場の崩壊につながる深刻な事態です。
大量離職による医療現場への影響を示す図
コロナ禍からの回復遅れ、厳しい経営状況続く
新型コロナウイルス感染症のパンデミックの影響で、医療機関の経営状況は悪化の一途を辿っています。2020年にも賃金が大幅に引き下げられましたが、今年はさらに厳しい状況となっており、2020年と比較しても正職員の平均額で9689円のマイナスとなっています。「医療経済学者」の佐藤一郎氏(仮名)は、「医療現場の疲弊は深刻で、このままでは優秀な人材の流出が止まらず、医療の質の低下は避けられない」と警鐘を鳴らしています。
医療従事者の待遇改善、未来への投資を
国民の健康と命を守る医療従事者。彼らの待遇改善は、日本の未来への投資と言えるでしょう。持続可能な医療体制を維持するためにも、早急な対策が求められています。