中国で日本人男性がスパイ活動に関与したとして実刑判決を受けたことを受け、日本の外務省は、どのような行為が「スパイ行為」と見なされるか具体的な事例を挙げて、在留邦人や渡航者への厳重な注意喚起を発出しました。予期せぬトラブルに巻き込まれないよう、中国における法規制、特に「反スパイ法」に対する深い理解と慎重な行動が今、強く求められています。
中国「反スパイ法」の対象と邦人拘束の現状
中国政府が施行する「反スパイ法」は、国家の安全保障を脅かす行為を厳しく取り締まることを目的としています。この法律の下では、中国の「国家秘密」の窃取、偵察、買収、不法な入手、および国外組織や個人への提供などが「スパイ行為」と規定され、非常に重い刑罰の対象となり得ます。
これまで、この法律を巡っては複数の日本人を含む多くの外国人が拘束されており、その適用範囲の不透明性が国際社会から指摘されています。直近では、本年5月16日には、アステラス製薬の日本人男性社員がスパイ活動を行ったとの理由で、懲役3年6か月の有罪判決が言い渡されました。
外務省が警告する具体的な「危険行為」事例
外務省が22日に公式サイトで発出した注意喚起では、特に日本人にとって一般的な行動であっても「スパイ行為」と誤解されかねない具体的な事例を明確に示し、警戒を促しています。これには以下のような行為が含まれます。
- 軍事施設の撮影: 観光目的であっても、軍事施設や関連インフラの撮影は厳しく禁じられています。
- 無許可の調査活動: 考古学調査や地質調査、環境調査など、専門的な調査に従事する際に、許可なく地理情報を収集、取得、または所有する行為。これは研究者やビジネス関係者にとって特に注意が必要です。
- 地図の所持: 特に詳細な地図や、軍事的な機微情報を含む可能性のある地図の所持も問題視される場合があります。
- 無許可のアンケート調査: 一般的な市場調査や学術調査の一環として、無許可でアンケート用紙を配布し、統計データを収集する行為も法律に抵触する可能性があります。
これらの例は、個人の行動が意図せずとも「国家安全」に関わるものと解釈され、厳罰に処されるリスクがあることを示唆しています。日本政府は、この法律の対象や適用範囲の「不透明さ」をかねてより指摘しており、具体的な事例を提示することで、邦人が不本意な形で事件に巻き込まれることを防ぎたい考えです。
今後の渡航・滞在における留意点
中国への渡航や滞在を予定している邦人、および既に滞在中の邦人に対しては、中国の法令、特に「反スパイ法」および関連する国家安全保障関連法を十分に理解し、現地の習慣やルールを尊重した上で慎重に行動することが不可欠です。不審な点があれば、すぐに在中国日本大使館や最寄りの総領事館に相談することが推奨されます。
参考文献:
- 日テレNEWS NNN. (2024年5月22日). 中国「反スパイ法」で外務省が具体例挙げ注意喚起. https://news.yahoo.co.jp/articles/3bcbda34d1faf67f942c8b03b8216308d49b0d31