昨年10月、英国からギリシャへ向かうTUIエアウェイズの旅客機が飛行中に引き返すというトラブルが発生しました。乗客193名は酸素欠乏の危機に瀕していたことが、英国航空事故調査局(AAIB)の公式報告書で明らかになりました。本記事では、この事件の詳細と原因、そして今後の航空安全への教訓について解説します。
メンテナンスミスが引き起こした与圧トラブル
事件の発端は、離陸前の空調システムメンテナンスでした。機内の与圧を制御する重要な「抽気スイッチ」が、作業中に誤ってオフにされたままになっていたのです。このミスは、その後のフライト前の安全点検でも見過ごされてしまいました。
離陸前のメンテナンスミスが原因で機内の与圧が失われたTUIエアウェイズ機
離陸後、高度が上昇するにつれて客室内の気圧が低下。機内は酸素不足の状態に陥り、乗客は低酸素症のリスクにさらされました。低酸素症とは、脳への酸素供給が不足することで引き起こされる症状で、重症化すると意識障害や最悪の場合死に至る危険性もあります。
見過ごされた警報とパイロットの判断
飛行中、客室与圧異常警報システムが作動しましたが、パイロットは当初、この警報の意味を理解できませんでした。43分もの間、警報が鳴り続ける中、パイロットはマンチェスター空港のメンテナンスチームに相談。最終的にマンチェスターへの引き返しを決定しました。
AAIBの報告書によると、パイロットは誤ってオフにされたスイッチをオンに戻しただけで十分だと考え、緊急対応ハンドブックに記載されている酸素マスクの着用などの対応を取らなかったとのこと。この判断が適切であったかどうか、今後の検証が必要です。
航空安全への教訓と再発防止策
幸いにもこの事件による負傷者は出ませんでしたが、一歩間違えれば大惨事につながる可能性もあった深刻なインシデントでした。航空会社は、今回の事件を教訓に、メンテナンス手順の見直しや乗務員の訓練強化など、再発防止策を徹底的に実施する必要があります。
専門家の見解
航空安全コンサルタントの田中一郎氏(仮名)は、「今回の事件は、些細なミスが重なって大きな事故につながる可能性を示す典型的な例だ。ヒューマンエラーを完全に防ぐことは不可能だが、多重チェック体制の強化や、緊急時の対応手順の明確化など、リスクを最小限に抑える努力が不可欠だ」と指摘しています。
まとめ
TUIエアウェイズ機の与圧トラブルは、メンテナンスミス、安全点検の不備、そしてパイロットの判断ミスなど、複数の要因が重なって発生したインシデントでした。航空業界全体が今回の事件から学び、安全対策を強化することで、同様の事故の再発防止に努めることが重要です。