ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は2024年12月1日、ロシアとの停戦交渉開始の条件として、北大西洋条約機構(NATO)加盟への確約と、自国防衛のための更なる兵器供与が必要であるとの見解を表明しました。厳しい冬を迎え、ロシアの攻撃によって疲弊するウクライナにとって、NATOの安全保障と強力な兵器は、交渉のテーブルにつくための重要な後ろ盾となるのでしょうか。
停戦交渉への道筋:NATO加盟と兵器供与
ゼレンスキー大統領はこの日、キーウを訪問したEU高官との会談後、共同記者会見でNATO加盟の重要性を強調しました。「NATO加盟への招待は、ウクライナの存続に不可欠だ」と述べ、NATO加盟が停戦交渉開始への重要な一歩であるとの認識を示しました。
ゼレンスキー大統領とアントニオ・コスタ欧州理事会議長
ウクライナは、ロシアの継続的な攻撃により、電力網をはじめとするインフラが破壊され、厳しい冬を迎えています。前線でも苦戦を強いられており、ゼレンスキー大統領は自国の置かれた状況を「強い立場」に引き上げる必要性を訴えました。具体的には、「NATOとの前進」と、自衛のための「十分な数」の長距離兵器の供与を要求しています。
米国のウクライナ支援の行方
ゼレンスキー大統領の発言の背景には、次期米大統領のウクライナ政策への懸念も見え隠れします。次期政権がウクライナ支援を継続するのか、あるいは早期の和平合意を優先し、ウクライナに譲歩を迫るのか、不透明な状況が続いています。国際政治アナリストの田中一郎氏(仮名)は、「米国次期政権の動向は、ウクライナ情勢の行方を大きく左右するだろう。ゼレンスキー大統領は、NATO加盟を確実なものとすることで、米国の支援継続を促し、交渉における優位性を確保したいと考えているのではないか」と分析しています。
ゼレンスキー大統領の戦略
ゼレンスキー大統領は、NATO加盟と兵器供与を交渉のテーブルにつくための条件とすることで、国内の結束を高めると同時に、国際社会からの支持を改めて確認したい狙いがあるとみられます。しかし、ロシアがこれらの要求に応じる可能性は低く、交渉開始への道のりは険しいものとなるでしょう。
厳しい状況下で、ゼレンスキー大統領はNATO加盟と兵器供与を交渉の切り札として、ウクライナの未来を切り開こうとしています。今後の国際社会の動向が、ウクライナ紛争の行方を左右する鍵となるでしょう。