物価高騰が続く中、ランチ代も節約を意識せざるを得ない時代。そんな中で、一杯たったの290円で博多ラーメンを提供し続ける店がある。福岡県内に9店舗を展開する「博多ラーメン はかたや」だ。創業以来守り続ける驚きの価格設定。その背景にある信念に迫る。
290円という価格へのこだわり
福岡のラーメン店「はかたや」の社長・澄川誠氏
昭和51年創業の「博多ラーメン はかたや」は、福岡県民には「はかラー」の愛称で親しまれ、幹線道路沿いにお店を構える地元密着型のラーメン店。創業当時から変わらぬ290円という価格でラーメンを提供し続けている。
一体なぜ、この時代に290円という低価格を実現できるのか?そこには、社長である澄川誠氏の揺るぎない信念があった。澄川氏は語る。「福岡では、ラーメンは日常食。高額だと特別な日にしか食べられない贅沢品になってしまいます。だから、安さを重視しているんです。今の週刊少年ジャンプと同じくらいの価格帯で、気軽にラーメンを楽しんでほしい」。
確かに、この価格なら学生でも漫画雑誌を買う感覚でラーメンを楽しめる。食文化ジャーナリストの佐藤恵氏も「はかたや」の価格設定を高く評価し、「ラーメン文化の裾野を広げ、多くの人にラーメンの美味しさを届ける重要な役割を果たしている」と語る。
福岡のラーメン店「はかたや」の博多ラーメン
原価高騰の中でも価格を維持する秘訣
多くのラーメン店が値上げを余儀なくされる中、「はかたや」はどのようにして低価格を維持しているのか?澄川氏は、「原価が上がっても、売価を上げるのが正解とは限らない。売価は市場が決めるもの。原価高を理由に値上げするのはお客様本位ではない」と断言する。
フードビジネスコンサルタントの田中一郎氏も、この戦略に賛同。「薄利多売を実現するための効率的なオペレーションや、地域密着型の経営による固定費の抑制など、様々な工夫が凝らされているはずだ」と分析する。
福岡のソウルフードを守り続ける「はかたや」の未来
「はかたや」は、単に安いラーメンを提供するだけでなく、福岡のラーメン文化を支える重要な役割を担っている。澄川氏の信念と努力が、これからも多くの人々に喜びと美味しさを届け続けるだろう。