アメリカで、必要以上に貯蓄する人が増えているという現象が注目されています。物価高騰の影響を受け、経済的な不安から貯蓄に励む人が増えているのです。この記事では、高収入層にも広がる節約志向の実態と、その背景にある社会経済的な要因について解説します。
収入の3分の1しか使わない32歳女性
ミシガン州に住む32歳の女性は、年収10万ドル(約1550万円)を超えながらも、徹底した節約生活を送っています。生活費は月2000ドル(約31万円)に抑え、収入の3分の1しか使っていません。
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彼女は中古品を購入したり、パンやパスタ、保存食まで手作りしたりと、節約に多くの時間を費やしています。節約はもはやライフスタイルの一部となっており、多少の不便さはあっても、この生活を変えるつもりはないそうです。しかし、将来への不安がないわけではなく、職を失うことへの不安も抱えていると語っています。
高収入層にも広がる節約志向
アメリカでは伝統的に貯蓄額が少なく消費が多い傾向がありましたが、近年、必要以上に貯蓄する人が増えています。これは、推奨されている貯蓄率(年収の15~20%)をはるかに上回る額を貯蓄している人たちのことです。
金融専門家によると、この背景には生活費の高騰があります。数年前に起きた9%ものインフレの影響が未だに残っており、人々の経済的な不安感を高めているのです。
貯蓄増加の兆候
バンク・オブ・アメリカが2024年に実施した富裕層調査によると、投資可能資産が300万ドル(約4億6500万円)以上ある人のうち、過去2年間で手元現金の額を増やしたと回答した21~43歳の人は55%に達しました。平均してポートフォリオの約18%を現金で保有しており、これは金融のプロが推奨する2~10%を大きく上回っています。
また、Redditの早期退職を目指す高収入層向けのコミュニティ「r/FIRE」や、高収入層の資産運用に関する情報交換コミュニティ「r/HENRYFinance」の登録者数も急増しており、高収入層の貯蓄志向の高まりを示しています。
富裕層の消費行動の変化
富裕層の間では、出費を抑える傾向が強まっています。ディスカウントストアのダラー・ツリーは、2023年度の新規顧客340万人の大半が年収12万5000ドル(約1930万円)以上の世帯だったと発表しました。
高収入のアメリカ人は、クーポンを利用したり、中古品を購入したりする割合も高く、経済的な不安から堅実な消費行動をとる傾向が強まっていることがわかります。
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専門家の見解
ファイナンシャル・アドバイザーのキティ・リッチー氏は、十分な貯蓄があるにも関わらず、貯蓄を取り崩すことに抵抗を感じるクライアントが増えていると指摘しています。「コツコツ貯めてきたお金を失いたくない」という心理が、貯蓄への執着につながっていると考えられます。
まとめ
アメリカでは、物価高騰による経済的な不安から、高収入層を含め多くの人が貯蓄に励むようになっています。節約志向の高まりは、消費行動にも変化をもたらしており、今後の経済動向に注目が集まります。