ウクライナ在住コリアン、北朝鮮兵参戦に揺れる想い:同胞への複雑な感情と祖国の分断への懸念

ウクライナ侵攻に北朝鮮兵が加わるというニュースは、ウクライナに住むコリアン社会に大きな衝撃を与えています。今回は、戦禍のウクライナで揺れ動く彼らの複雑な思い、祖国分断への不安、そして未来への希望について迫ります。

戦争の影に揺れるウクライナのコリアン社会

1960年代から80年代にかけて、ロシア極東や中央アジアから多くのコリアンがウクライナに移住しました。現在、ウクライナ全土には1万~3万人ほどのコリアンが暮らしていると推定されています。彼らはウクライナ社会に溶け込みながらも、朝鮮半島にルーツを持つ者としてのアイデンティティを大切に守ってきました。しかし、2014年のクリミア併合、そして2022年のロシアによるウクライナ侵攻は、彼らの生活を一変させました。

ウクライナのキーウで取材に応じる全ウクライナ朝鮮協会のイホール・リム青年部長ウクライナのキーウで取材に応じる全ウクライナ朝鮮協会のイホール・リム青年部長

全ウクライナ朝鮮協会のイホール・リム青年部長(29)は、ロシアのコリアンとの関係悪化を嘆いています。2014年のクリミア併合以降、両者の溝は深まり、今回の侵攻で決定的なものとなってしまいました。さらに、朝鮮半島にルーツを持つウクライナ人も祖国を守るためウクライナ軍に従軍し、20人以上が命を落としたという悲しい現実も突きつけられています。

同胞に銃を向ける苦悩

リム氏が最も恐れているのは、ロシア西部に派遣された北朝鮮兵がウクライナ領内に侵攻してくることです。「同胞に銃を向ける日が来るかもしれない」という想像を絶する苦悩が、ウクライナのコリアン社会を覆っています。キーウ州の領土防衛隊に所属する20代のコリアン男性は、「たとえ北朝鮮兵であっても、ロシア軍に加われば敵と見なす」と強い決意を語りました。祖国を守るため、同胞と戦うという悲劇的な状況に彼らは追い込まれているのです。

分断の悲劇、そして未来への希望

南北統一を願ってきた世代にとって、北朝鮮兵の参戦はさらなる分断を意味する痛ましい出来事です。 食文化研究家のキム・スンヨン氏(仮名)は、「コリアン社会は歴史的に幾度となく分断の苦しみを味わってきました。今回の出来事は、その傷をさらに深くするものです」と指摘します。しかし、彼らは希望を失ってはいません。リム青年部長は、「いつかこの戦争が終わったとき、再びコリアン同士が手を取り合える日が来ると信じています」と力強く語りました。

この戦争は、ウクライナに住むコリアン社会に大きな試練を与えています。同胞との対立、祖国の分断への不安、そして未来への希望。複雑な感情を抱えながらも、彼らは力強く生きています。