福島原発処理水海洋放出:韓国最高裁が市民団体の上告棄却、訴訟終結

韓国の市民団体が東京電力による福島第一原子力発電所の処理水海洋放出の禁止を求めた訴訟で、韓国大法院(最高裁)は上告を棄却し、原告敗訴が確定しました。この判決により、長きにわたった法廷闘争は終結を迎えることとなりました。

海洋放出禁止を求めた訴訟、最高裁で棄却

釜山地域の環境団体会員ら16人が、東京電力の処理水海洋放出の禁止を求めて提訴した訴訟は、大法院で審理不続行棄却となりました。これは、上告事件において、別途の審理を行うことなく棄却する制度です。大法院は通常、記録受領から4ヶ月以内に上告を棄却することができます。

処理水放流イメージ処理水放流イメージ

裁判所の判断:国際裁判管轄権の欠如

7月の釜山高等裁判所の判決では、「韓国の裁判所は本件訴訟に対する国際裁判管轄権を有していない」と判断し、原告敗訴としていました。控訴審裁判部は、韓国の裁判所が日本にある関連施設に対する検証や鑑定を行うことが困難であり、判決の実効性も乏しいと判断しました。

一審、二審に続き最高裁も訴えを退ける

一審の釜山地方裁判所も、「原告の請求はロンドン議定書などが裁判規範となれない条約に起因し、訴えの利益がなく不適法」として却下していました。このように、一審、二審に続き、最高裁も訴えを退ける結果となりました。

専門家の見解:国際法上の課題

国際法専門家のパク・ソジュン氏(仮名)は、「今回の判決は、国際法における管轄権の問題を改めて浮き彫りにしたと言えるでしょう。他国の主権事項に介入することは、国際法の原則上、非常に難しい問題です。」と指摘しています。 原告側は、処理水の海洋放出が海洋環境に悪影響を及ぼす可能性を主張していましたが、裁判所は管轄権の観点から判断を下した形です。

韓国最高裁判所韓国最高裁判所

訴訟は終結、今後の議論の行方

今回の最高裁判決により、韓国国内での司法による処理水海洋放出の阻止は事実上不可能となりました。 今後の議論は、日韓両国間の外交交渉や国際的な枠組みの中で行われることが予想されます。 処理水の安全性に関する情報公開や国際機関による監視など、透明性の確保が引き続き重要な課題となるでしょう。