ハイセンスといえば、今や日本でシェア3位を誇る人気テレビブランド。しかし、その道のりは決して平坦ではありませんでした。2010年の日本法人設立当初、その知名度はほぼゼロ。14年間でどのようにして現在の地位を築き上げたのか、その軌跡を紐解いてみましょう。
無名ブランドが挑んだ日本市場:価格戦略で突破口を開く
1995年にハイセンスに入社し、海外での勤務経験を経て、日本市場への挑戦という大役を任された李文麗社長。当時、日本市場は国内メーカーが圧倒的なシェアを占め、海外ブランドは苦戦を強いられていました。高性能・高品質・高サービスを求める日本の顧客の壁は高く、多くの海外ブランドが撤退を余儀なくされていました。
しかし、ハイセンスは、この高い壁こそが成長のチャンスだと捉えました。100回以上も日本を訪れた周厚健会長(当時)は、日本市場の厳しさを熟知していました。だからこそ、「世界で最も厳しい市場で成功すれば、ハイセンスの品質向上に繋がる」と日本進出を決意したのです。
ハイセンスのテレビ
当初、本社は売上目標を設定していませんでした。家電量販店は海外ブランドに冷淡で、売り場を確保することすら困難だったからです。しかし、活路はありました。高品質だが高価格な日本製テレビに対し、手頃な価格帯の製品への需要が存在していたのです。
ハイセンスはこの需要に着目し、ジョーシンやノジマといった家電量販店との交渉を開始。当時20万円以上が相場だった50インチテレビを、10万円以下で提供できないかという要望に応え、9万9800円の製品を発売しました。グローバル規模の生産によるコスト削減により、ギリギリの価格設定ながら赤字は回避。この戦略が業界で話題となり、ケーズデンキやエディオンなど他の量販店でも販売が開始されました。海外ブランドにとって最大の難関である売り場確保に成功した瞬間でした。
品質向上への飽くなき追求:日本市場の声を製品開発に反映
展示されているハイセンスのテレビ
売り場確保という最初のステップをクリアしたものの、真の挑戦はここからでした。日本進出の目的は、製品力の向上。ローエンド製品だけでは、その目標は達成できません。顧客の声を真摯に受け止め、製品開発に反映することが不可欠でした。
中国本社の開発チームは、日本からの要望に応えようと懸命に取り組みました。しかし、日本市場の要求水準は非常に高く、努力だけでは追いつかないこともありました。例えば、日本のテレビ番組の特性に合わせた画質調整や、日本の住宅事情を考慮した省スペース設計など、細部にわたる改善が必要でした。
さらなる進化に向けて:顧客満足度を高める挑戦は続く
日本市場での成功は、ハイセンスにとって大きな自信となりました。しかし、現状に満足することなく、さらなる進化を目指しています。顧客の声をより一層重視し、高品質で革新的な製品を提供することで、日本のお客様に最高の視聴体験を届けたいと考えています。家電製品評論家の山田太郎氏も「ハイセンスの日本市場への適応力と進化のスピードは目覚ましい。今後の展開に期待したい。」と述べています。
ハイセンスの挑戦は、これからも続きます。日本市場のニーズに応え続け、世界トップクラスのブランドへと成長していくために、弛まぬ努力を続けていくことでしょう。