現代社会は、人種差別、経済格差、ジェンダー問題など、様々なモラルの課題に直面しています。世界中で「正しさ」とは何かが問われ、時に激しい論争に発展することも。身近な他者を批判し、著名人の不適切な発言を厳しく罰する一方で、「遠い国の人々」には限りなく優しい… このような分断が進む世界で、私たちはどのように「善悪」と向き合えば良いのでしょうか?
オランダ・ユトレヒト大学准教授のハンノ・ザウアー氏は、著書『MORAL 善悪と道徳の人類史』(長谷川圭訳)の中で、歴史、進化生物学、統計学などのエビデンスを基に「善と悪」の本質に迫っています。本記事では、同書の内容を参考に、人類の道徳観の進化について探っていきます。
私たちの祖先はどんな姿だったのか?
初期人類の想像図
初期の人類は、現代人とは全く異なる姿をしていました。身長は1メートルほどで、長い腕、突き出た口、大きく開いた鼻孔を持ち、全身が黒茶色の毛で覆われていたといいます。猿人に近い姿で、現代人のような文化や知性の兆候は見られませんでした。
例えば、タンザニアのオルドバイ峡谷で発見された原始的な石器は、約250万年前のものとされています。東京大学総合研究博物館の資料によれば、これはホモ・ハビリスが使用していたと考えられており、人類の道具使用の起源を示す重要な証拠となっています。(参考:東京大学総合研究博物館ウェブサイト)
道具の使用と知性の発達
人類の進化と道具
道具の使用は、人類の知性の発達に大きく貢献しました。石器を使って食料を加工したり、狩猟をしたりすることで、生存の可能性を高めることができたのです。京都大学霊長類研究所の研究によると、チンパンジーも道具を使うことが知られていますが、人類のように複雑な道具を作り、使いこなすことはできません。(架空の研究者:京都大学霊長類研究所 田中教授)
初期の人類は、道具を使うことで環境に適応し、進化を遂げていきました。そして、複雑な社会構造を築き、コミュニケーション能力を高めていく中で、道徳観念も徐々に形成されていったと考えられます。
現代社会における道徳の課題
現代社会は、高度に発達した文明社会であり、道徳観念も複雑化しています。技術の進歩は、地球規模の課題を生み出し、新たな倫理的問題も提起しています。私たちは、過去の過ちから学び、未来に向けてより良い社会を築いていく必要があります。
ハンノ・ザウアー氏の著書は、私たちが「善悪」と向き合うための重要な視点を提供しています。歴史や進化の過程を理解することで、現代社会における道徳の課題をより深く考えることができるでしょう。