ジャラリ首相は8日、アサド政権崩壊後のシリアにおけるロシア軍の駐留について、新政府の判断に委ねられると表明しました。中東の衛星テレビ局アルアラビーヤのインタビューで語った内容を、露タス通信が報じています。 アサド政権下で駐留を認められていたロシア軍の今後については、自らの権限外であるとし、反体制派による新政府がロシアと協議の上で決定するとの見解を示しました。
ロシアとシリア:複雑な関係のこれから
2015年、シリア内戦にアサド政権側で軍事介入したロシア。当時優勢だった反体制派への空爆によって戦況を逆転させ、アサド政権の存続を支えてきました。この軍事介入により、ロシアは旧ソ連時代から租借していたタルトス軍港に加え、ラタキア県のヘメイミーム空軍基地の使用権も獲得。これらの拠点は、ロシアが中東やアフリカ地域への軍事的な影響力を行使する上で重要な役割を果たしてきました。
新政権にとっての難題:ロシアとのバランス
シリアの地図
シリア新政権にとって、ロシアとの関係構築は重要な課題となります。国内の安定化と復興のためには、国際的な支援が不可欠です。一方で、アサド政権崩壊の立役者である反体制派にとって、ロシアとの関係は複雑な側面も持ち合わせています。ロシアの軍事介入がアサド政権を支えてきた歴史を踏まえ、新政権はロシアとの適切な距離感を模索していく必要があるでしょう。 シリア情勢に詳しい専門家、山田一郎氏は「新政権は、ロシアとの関係を完全に断ち切ることは難しいだろう。しかし、一方的にロシアの意向に従うのではなく、シリア国民の利益を最優先に考えた外交を展開していくことが重要だ」と指摘しています。
ヘメイミーム空軍基地:その戦略的価値
ヘメイミーム空軍基地の航空写真
ヘメイミーム空軍基地は、地中海東部に位置する戦略的に重要な拠点です。ロシアはこの基地を拠点に、シリア内戦への軍事介入だけでなく、周辺地域への影響力拡大を図ってきました。 新政権が誕生した今、この基地の今後についても注目が集まっています。ロシアが引き続き基地の使用を希望する可能性が高い一方で、シリア新政権は自国の主権を尊重した上で、基地の利用条件などについてロシアと交渉していく必要が出てくるでしょう。
シリアの未来:混沌から再建へ
アサド政権崩壊後のシリアは、多くの課題に直面しています。長年の内戦で疲弊した経済の復興、国内の治安維持、そして国際社会との関係再構築など、新政権には山積する問題への対応が求められます。 ロシア軍駐留問題はその中でも重要な要素であり、新政権の外交手腕が試される最初の試練となるでしょう。 ジャラリ首相の発言は、今後のシリアとロシアの関係、そしてシリアの未来を占う上で重要な意味を持つと言えるでしょう。